出荷基準・着荷基準・検収基準(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第10回)

はじめに

売上取引の流れと認識の3パターン。これは結構実務的にも役に立つ話なので、実務をやられている方もこの機会にしっかりとイメージを持っていただければと思います。
現場で結構問題になる話を含んでいます。また、検収基準による売上認識の問題例についても見ていきたいと思います。

売上取引の流れ

ではまず、売上取引の流れと認識の3パターンについてチェックしていきましょう。

一般的な売上取引の流れは、①商品の出荷、倉庫から出荷します。
そして②得意先への到着、着荷です。
そして③得意先における検収(検査・収納)という3つのポイントからおおむね構成されています。

このあと請求という段階もあります。
多くの中小企業はわりと請求書の日付でやっているケースもあるけど、厳密に言うと、請求書の日付は結構変えられるので、物の動きで考えるとかいろいろな考え方があります。

簿記検定もそうですが実務的には、出荷の時なのか、着荷の時なのか検収なのか、この3つを軸に考えることが多い気がします。このあたり参考になさってください。

この他にもいろいろ進み具合によって、原価比例とか、工事の進捗に従って売上をあげるケールもあります。それはまた別の機会にやりましょう。

売上計上のタイミング

今回は引渡しです。出荷、着荷、検収の3つを見ていきましょう。
どのタイミングで売上計上するかは、経理規定で決めればいいのです。
税法などの規定もあると思いますが、細かく言うと3日くらいずれるのです。
輸送や輸出もそうですが、船積みというのがあります。船積基準という言葉が昔ありました。
結構ポイントがたくさん出てくるのです。どの段階で売上を上げるかを経理規定で決めておいたほうがいいです。

例えば、コンビニでおにぎりくださいと、レジに渡すのが一番簡単です。
引渡基準と言うのですが、引渡が簡単。出荷と着荷が同じだから。
出荷しました、手渡し、レジ袋に入れた瞬間に引渡が終わる。
引渡が瞬間的に終わるような店頭販売が楽なのですが、卸売や遠隔地販売の場合は、出荷から相手の手元に渡るまでにタイムラグという時間のずれがあるのです。

これが店頭小売と違うのです。その場で引き渡しますから。
業者間取引では、距離があります。あとはネット取引があります。
申込ボタンをぽちっと押したときなのかと、これはこれでいろいろな考え方があるので、突き詰めると売上の計上基準は、1冊の本ができるくらい深いのです。

売上計上時期の影響と税務調査

これは結構問題になります。税務調査では。1日違ったら課税所得が変わります。
日づれで今年の税金が変わるから。会計士の監査の中で、決算日前後の取引は重点的に監査します。不正やミスが起きやすいからです。決算日の前後3日とか、少なくとも決算日と翌日は重点的にやります。

その時の出荷伝票を見たり、出荷データを精査してピンポイントで見ますので、一応監査対策してください。

決算日前後は一応注意です。ここでいろいろ起きやすいのです。一日の日づれで売上は場合によっては、上場企業は数億円変わってきます。

これを修正しなければならないということもありますので、監査上問題が起きます。
監査証明が出ないので。決算日前後の取引は税務上も監査上も注意してください。期末日前後は大事です。

どのポイントが売上のポイントになるか。事業によって変わってきます。
出荷の段階がいいだろうというケースもあるし、着荷の段階がいいだろう、あるいは検収が大事だから検収の段階か、経理規定に明文化して、一旦決めたら毎期継続して適用するという継続性の原則が働きます。

継続して適用しないと、利益操作ができてしまいます。あるときは出荷、あるときは着荷となると、意図的に売上の操作ができますから。

利益操作させないように一旦決めたら継続して公平にルールを守りましょう。
去年と今年で出荷着荷を変えたらまずいのです。継続適用しないと疑いを持たれます。不正していませんか、となるので注意です。

売上計上時期は深いのです。今回、簿記検定対策を考えて、さらっとやっていきます。
業種によって違うので売上計上時期は面白いのです。
その気になればコンサルができます。巡回監査の対象になります。

売上計上の具体的な事例

売上取引の流れと認識の3パターンを引き続き見ていきましょう。
例えば、3月31日に出荷しました。得意先に到着、到着日基準です。
到着したのが4月1日、これありえます。

ということは、3月31日から4月1日の日付が変わるときは輸送中なのでトラックの中ということもあるわけです。本支店間取引に近いものがあります。

検収は一日遅れて4月2日ということもあります。そうすると3月31日の売上なのか、4月1日に売上を立てるのか、4月2日に立てるのか。

特に4月1日と3月31日、どっちになるかで全く売上が変わってきます。損益計算書の利益に影響を及ぼしますので大きいです。

例えば、出荷日3月31日が決算日で、着荷日が4月1日または検収日4月2日の場合は、売上の計上時期に差が生じます。結構大きいです。

それをふまえて検収基準が試験に出る可能性があるので、大体出荷のイメージでしょう。
出荷したと売上にできますが、検収基準というふうに問題文に出ていたら、検収基準に直す仕訳です。

あと始末に負えない問題としては、経理担当者が出荷基準に記帳してしまっているケースが出る可能性あります。
こうなるとちょっとややこしいけど実務的です。

最近、経理担当に新任の人が入ったばかりで分からなかった。なんとか常識的なイメージの出荷でやってしまったけど、我が社の規定は検収基準となった場合は、直さないといません。日づれがあります。

決算整理前残高試算表、繰越商品60万円、仕入1,020万円、売上1,250万円。
1個10円のものを1,250個売ったと考えてください。
期末商品実地棚卸、倉庫にあるものが800でこれがポイントです。
問題文をよく読んでください。修正事項です。

決算日は3月31日だけど、3月31日に出荷した10千円×20個の売価、200千相当が先方に未着です。だから倉庫にはないのです。当然、実地棚卸に入っていません。

売上原価に入ってしまいます。それをふまえて12,500としているけれど、出荷日は3月31日で、先方に3月31日の段階で検収されてないのです。

そうすると本来の我が社の経理規定で行くならば、これを売上に計上してはまずいのです。
でもそれを出荷でやってしまったのです。そういうケースは結構実践的で面白いです。
12,500に200が入ってしまっている。200を取り消すから12,300になることは、容易に想像がつきます。

問題は、売上原価になってしまうので売上原価を減らさないとまずいです。
いくらでしょうかということです。これが実力を試される、センスです。

売上計上されています。実際にはトラックの中だから800個は無いのです。
入っていませんので期末在庫に足さないといけません。輸送中も在庫です。
当社の経理規定では検収基準で売上を認識するため、適性に修正しましょう。原価率を出さないといけません。

ちょっと高度ですが見ていきましょう。出荷が3月31日、1,250出荷しているのだけど、20はまだ相手に到着していないのです。相手に到着したのが着荷4月1日ですということです。

ですから実を言うとそれまでは300のはずなのです。そう考えると200をどう取り消すか。

あと在庫です。出荷基準なら12,500でいいのです。でも、着荷基準、検収基準なら12,300にしないとまずいということを知っておいてください。

まずは手元商品の流れです。こういうボックスは覚えてください。よく使います。
特に1級のときは使いますので、2級のうちに知っておくといいです。ボックス図は2級の勉強をされている方は、工業簿記でやります。材料費の計算、仕掛品の計算、総合簿記計算で使います。商業簿記でも使います。特に1級で使います。

期首は600、当期首は10,200、10,800あります。実地棚卸残高は800なので、差引いくらですか。

修正前の売上原価を出しましょう。出荷基準の場合です。
600+10,200で10,800-800だから売上原価はいくらですか。
10,000です。10,000と12,500を電卓たたいてみてください。このように計算します。
10,000÷12,500で0.8。80%が原価率ということです。0.8です。

ここまで分かりましたね。そうするとこの200を取り消すわけです。出荷の200は倉庫にはないけどもトラックの中で輸送中。
あるいは相手の所に着いていないか、着いていても検収していません。

ということは当社の在庫です。倉庫にはないけども、当社の在庫というケースがあるということを知っておいてください。

これが分かると本支店会計が分かります。実地棚卸には無いけど、違うところにあるということです。これは会計監査上の実務であり得ます。
外部倉庫もそうだけど、輸送中も当社の在庫になります。当社の在庫を、輸送中の在庫を計算しないとまずいです。
10千円×20個の200をまず取り消します。

借方売上200。従って売上は12,500ではなくて12,300になります。
では200を取り消しました。さっき0.8と言いました。
売価に対する80%が原価率なので、200×0.8ということを自発的に気が付かないといけません。これをセンスと言います。そうすると160。

まずは借方仕入600、貸方繰越商品600。あとは実地棚卸高800にいきましょう。借方繰越商品800、貸方仕入800。プラス200の取引は売上原価から外します。

期末の在庫ですので。倉庫にないけど輸送中の在庫ということで160を繰越商品借方、貸方仕入160。売上原価を減らさないといけません。

売上200に対して仕入160。そうすると期末の在庫は、いくらですか。800の倉庫の在庫と輸送中で未検収。先方に入れていないもの。倉庫には無いけども、輸送中で入れていない在庫160。トラックの中を160と考えましょう。トラック160と倉庫800を足して960。これが期末の棚卸高です。面白いですね。

借方繰越商品960、仕入はどうなるか。600+10,200、前の期が960なので9,840になります。これが正しい修正後の売上原価です。これは結構レベルが高いです。
1級レベルが入っています。もし2級で少し厳しくしようと思ったら、僕ならこういうところを一つくらい差し込みます。

ここまでは今までの知識を組み合わせればできます。一応2級の範囲の難しいほうです。もし本番で出たら、出来なくても仕方ないです。

200個の取り消しについて、160の繰越商品の追加もある。だから800ではないのです。960にできるか。これはセンスです。600+10,200-960で9,840。売上が12,300、12,500-200で12,300です。9,840÷12,300はちゃんと0.8。ちゃんと売上原価率は守られています。

ということで今回のまとは、売上取引の流れと認識の3パターンで、まずは決算日に出荷がありました。着荷日が4月1日、検収日が4月2日。この3つのどれかで売上を計上するというふうに経理規定というルールで決めておきます。

一旦決めたら、毎年継続して適用することで利益操作などの疑いを持たれずに済みますので継続してくださいという話です。
一旦決めて明文化したら、不正が起きないように、あとは引き継ぎがちゃんとできるように経理規定を作っておいて、処理を安定させましょう。

例えば、出荷日3月31日が決算日で、着荷日4月1日または検収日4月2日の場合は、売上の計上時期に差が生じますということを改めて意識しておきましょう。

2つ目。検収基準による売上認識の問題例ということで見てきましたが、決算日が3月31日で出荷分10千円×20個が先方に未着・未検収です。
借方が売上10×20で200、貸方売掛金200。あとは80%を出せるなら、これに合わせて繰越商品も在庫が増えます。借方繰越商品160、貸方仕入160で取り消しましょうということです。この結果、決算整理前が売上12,500だったのが200減らして12,300になりました。
そして期首の在庫は600、600に10,200を足して、期末は800と160で960を引きました。そうすると600+10,200-960で9,840が売上原価でそれに対応する売上が12,300。

ちゃんと80%という原価率は維持されています。期末の商品棚卸高は800と実地棚卸高と160の未検収分の倉庫外の、外部の在庫で960ということを分かっていただければ実務的な感覚センスを磨かれます。

こういった在庫もあるってことは、皆さんご自身の会社とかでいろいろな事例で意識してみてください。意外に在庫漏れということもありますから気を付けて注意しましょう。

我々、公認会計士は監査対象になります。
外部倉庫とか輸送中のものをどうやって証明してもらうかと客観的にチェックします。参考になさってください。

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