手付金とは、というテーマで見ていきましょう。
契約にあたってサービス提供前に支払うお金のことです。
不動産取引においてはよくあるケースとして、買主、不動産を買う方です、買主が手付金というものを払うのですが、それを放棄する、その手付金はいらないですよと言ったらその不動産取引を解除できます。
解約手付と言うのですが、こういったケースはよくあります。
買おうと思って契約しました。その時に100万とか200万とかの手付金を渡します。
それを放棄します、返さなくていいですという状況にして不動産取引をやめることができます。
逆に売主も、手付金を預かりました、でも売主の都合で他にもっといい条件の買い手が見つかったとか、いろんな理由でやっぱり売るのをやめたと言った時に、影響が大きいので、例えば手付金100万円を預かりました。
100万円を返すのは当たり前ですけど、手付倍返しと言って、預かった100万円と同じ金額を加えて200万円、耳を揃えて返す。
倍でお金を返せば、売主も解除できます。
結局、手付金の金額は解約するときの違約金みたいなものです。
そういった形で、解約のためのお金、人質みたいなものです。
これは民法557条1項に書いてあって、解約手付と言われています。
これは不動産取引では結構有名な話です。解約手付の話は言い出すときりがないです。
特約もあるけど、手付金は契約に際して通常やり取りされます。
エアコンとかそういった電気製品、ちょっと高いもの、20万、30万とか結構するものがあります。
高いものを買った時に、後日配送してもらいましょうと、そのときに、お金は後払いでいいからと、申し込んだときに手付で、例えば10万円のものを1,000円でも2,000円でも、1万円ぐらい一部でいいからお金は手付として入れてくれませんかというケース、電気屋さんでそのような経験はありませんか。
少ない金額を入れておいて、あとで残りを払うという形で手付はあり得ます。
なお、似た用語に内金という言い方をするときもあって、簿記の試験でも過去、内金を渡したという言い方をすることがあります。
厳密に言うと実は違うのです。内金は単に、契約後でもいつでもいいです。よく中間金と言います。
例えば10万円の商品を注文しました。その後、代金の一部の支払いなのです。
代金の一部払いなので手付金とは少し意味が違います。
これは単なる契約成立に当たって、代金の一部を払っただけなので手付金とは違います。
契約のときに払うイメージだと思ってください。
細かく言うときりがないのですが、そのような形です。内金は単なる代金の一部前払いで、細かくは解約手付とは違いますが、簿記の取引上は手付金を払ったという場合も、内金を払ったという場合も厳密に言うとちょっと違うんだけど、会計上、簿記の世界では同じように扱います。
前金と考えます。前払金などという言葉を使ったりするというのが、3級で勉強するときに意識してください。
言い方として、内金という言葉があったら、違う会計処理かなと思ったらそんなことないです。会計処理上は内金だろうと手付金だろうと、その言葉を見たら前払金というふうに、3級では仕分け、転記を考えていただければいいでしょう。
こういった知識も知っておくといいと思います。簿記上は区別なく会計処理をします。手付金と内金です。
では実際に仕入取引における手付金・内金の処理の仕方について見ていきましょう。
前払金勘定を借方に書きます。資産です、左側です。
例です。
①商品50万円を注文し、手付金10万円を現金で払った。これは内金と書いても同じです。借方、左側前払金10万円という資産、貸方右側現金という資産のマイナス10万円、左側は資産プラスです。
そして後日、上記商品を仕入れ、商品50万円という費用が発生しました。
そのうち10万円は前払金で払っていますので、貸方前払金の資産を充ててマイナス10万円、残りの40万円が買掛金という負債の発生です。
借方仕入50万円、貸方前払金10万円と貸方買掛金40万、この仕訳のパターンをこの動画を一時停止して、3回4回と練習して、是非イメージとして刷り込んでください。
以上が仕入取引における手付金の支払いです。
では取引の例を見ていきましょう。
今の例に少し近いのですが、まずは商品15,000円を注文し、手付金3,000円を現金で支払った。これは内金と同じことだと考えてください。
借方前払金3,000、総勘定元帳は自動転記、資産のエリアで現金の下、前払金左側借方3,000、貸方現金3,000円なので資産グループの中で現金から前払金に3,000円だけ資産の運用状況が変わったと思ってください。これが1番目です。
2番目、後日、商品15,000円を仕入れ、費用です。借方仕入15,000費用が発生しました。代金の支払い方です。前払金をまず充てます。充当すると言います。
手付金3,000円を差し引いた残額を翌月10日払いとした。これは後払い、掛仕入れです。ということで、3,000円の前払金、手付金を充当した、あるいは充てたと言います。
15,000円のうち貸方は前払金3,000円です。残り貸方買掛金12,000円という負債です。
資産の減少、負債の増加そして費用の発生です。このように考えていただければいいでしょう。
次です。3番目、売上取引における手付金の受取りを見ていきましょう。
売上取引はもらう方です。今度は前受金という勘定科目を使って、負債の発生とするのが3級でまず学ぶやり方です。2級1級になってくると違った会計処理が出てきます。
収益認識などです。3級では前受金という勘定科目を知っておきましょう。
①商品50万円を受注し、手付金10万円を現金で受け取った。受け取った現金の発生だけ簿記の取引の記録に加えましょう。50万円の受注は口約束、ただのお約束は簿記上の取引ではないです。
資産負債が増えたり減ったりしません。資産負債が増えたり減ったりするものを簿記上の取引と言いますので、ここでは10万円の現金の受け取りだけは仕訳をします。
50万円の受注は単なるお約束ですから、まだ資産財産が動いていませんから法律上の取引だけど簿記の取引と考えず記録はしません。
商品50万円はあとでやります。現金左側借方10万円増加、貸方、前受金という負債が増えました。上記商品を売上げ、手付金を控除した残額を掛けとしました。
借方前払金10万円、借方売掛金40万円、貸方売上という収益の発生50万円です。
このような感じで考えていただければいいでしょう。
では取引の例です。×1年度、商品15,000円の注文を受け、手付金3,000円を現金で受け取りました。借方現金3,000資産、貸方前受金負債3,000となります。
②上記商品を発送し、発送ということは引渡しです。
通常簿記の世界では、特に前置きというか、他に条件がなければ引き渡しをもって売上と考えていいでしょう。
あとは研修基準とかいろいろあるのですが、とりあえず問題文をよく読んで、この場合は発送したことを売上の発生と考えましょう。
通常は引き渡しなのです。引き渡し、発送、出荷など言ったら引き渡しなので、他に条件が無ければこれで売上を上げましょう。他に条件があったらそちらに従ってください。
借方売掛金12,000、借方前受金3,000、貸方売上15,000となります。負債の減少。借方前受金3,000、借方売掛金12,000という資産の増加、貸方売上という収益の発生です。
これは今のうちに知っておくと便利な知識というか、元帳のどの部屋に何が増えたり減ったりするかイメージできるようになると簿記の力がつきますので、ぜひ練習してみてください。
では今回のまとめです。
1番目、手付金とは何か、契約にあたってサービス提供前に支払うお金のことです。
不動産取引においてよくあるケースとして、買主は手付金を放棄することで、あるいは売主は手付金の倍額を支払うことで、手付倍返しと言います。
ということでそれぞれ契約をなかったことにできます。解除できます。
これを解約手付と一般的に言われています。民法では557条1項で規定されていますが、別に条文を見なくてもいいです。
法律上定められている手付金です。なお、似た用語に内金というものがあります。
内金は単なる代金の一部前払いで、細かくは解約などの手付金とは違いますが、ただし手付金、内金という言葉があったら、簿記の記録上は区別なく、どちらも前払金、前受金などで処理しましょうということです。
2番目、仕入取引における手付金の支払いがあった場合、例えば借方前払金10万、貸方現金10万のように、前払金という資産勘定を計上します。
そして次です。②商品を仕入れた場合、借方仕入、貸方で前払金を充てて差額を買掛金とします。そして次3つ目、売上取引における手付金の受取りですが、商品を受注し手付金を受け取りました。借方現金とか現金預金です。貸方前受金という負債が発生します。
引渡義務です。ある種の義務です。負債、支払い義務です。次に売り上げました。
借方前受金10万円を充当します。残りの40万が売掛金、未回収の権利です。資産です。
貸方売上50万になります。ぜひ前受金の増加減少のイメージを持っていただければと思います。
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