建設仮勘定・資本的支出(スッキリ学ぼう日商簿記2級の超入門 第3回)

新規建設における仕訳

建物を新規に建設したときの仕訳例です。
3級の場合は借方建物のような形で、購入代金プラス付随費用という取得原価の計算と簡単な仕訳例をやりました。
2級になるとひと手間加わります。建設会社などに依頼して、建設してつくり上げるイメージがあります。

本社ビル・倉庫・工場など建物の建設を発注し、手付金を払って半年後に出来上がったなど、手付金をどうするかが2級でよく出ます。

建設仮勘定と言います。前払金のようなものです。現金で支払いました。建物が完成し、引き渡された。残額は月末払いとしましょうということはよくあります。

建物が増えて、建設仮勘定、手付金を充てます。差額は未払金とか現金を払う。
金額が大きいから小切手を振り出して当座預金から払うこともあるでしょう。
普通預金から振り込むなどという形で払われます。

借方建物、貸方建設仮勘定、貸方未払金です。ちなみに建設仮勘定はまだ事業に投下していません。営業目的に使っていませんから、減価しようがありません。

価値は増えるけど減りようがないので、減価償却しません。土地と建設仮勘定は非償却性資産といいます。償却性資産は建物や備品や機械や車両運搬具というのは減価償却します。

減価償却しないものを非減価償却性資産と言います。土地と建設仮勘定は減価償却しません。建設仮勘定を今回は覚えてもらいます。

簡単に仕訳問題をみていきましょう。
①倉庫建物(請負価額3,000万円)を発注し、手付金600万円を小切手振出しにより支払った。3,000万円は完成していません。ただ書いただけなので簿記上の取引ではありません。資産、負債が動けば記録します。仕訳の対象になるものを簿記上の取引と言います。
請負価額3,000万円と言っただけ、単に契約書を交わしただけでは仕訳の対象にはなりません。請負価額3,000万円は①の段階では関係ありません。

関係あるのは手付金600万円を小切手振出しで払った。資産が減っているのですから、ここで出てきます。借方建設仮勘定という資産が600増えて、貸方当座預金が減った。
資産の増加減少があったから仕訳をするわけです。簿記上の取引と言います。

応用系として純資産資本の内訳の変動も簿記上の取引になります。
資産負債は動いていませんが、仕訳の対象になります。基本は資産負債の増減です。
建設仮勘定という資産が借方600増えました。貸方当座預金600減りました。

②半年後、建物が完成し、引き渡しを受けた。請負価額3,000万なので3,000万円の建物が増えました。残額は翌月末の支払いとしました。

仕訳は、総勘定元帳の資産のグループ建物3,000万、建設仮勘定左にあった600万が右側に書かれて減ります。建設仮勘定は借方600、貸方600で差し引き0です。

左右の差し引きが残高、0です。そして3,000万と600万の差額で2,400万だけ貸方が余っています。これが未払金です。負債のところに書かれます。

試験によく出ますので大事です。間違うとまずいところです。絶対に取って欲しいポイントなのでこの一連のストーリーをふまえて、練習を3回以上やって、ぜひ本番の試験でも出来るようになってください。

修繕支出における仕訳

2つ目、修繕にいきましょう。資本的支出は固定資産の価値を高める支出、改良や耐用年数の延長です。物は増えてないかもしれませんが、見た目は性能が上がっています。質的なプラスです。

借方建物、貸方現金預金等です。それに対して収益的支出は、固定資産の機能維持のための支出で、補修とか定期点検などです。借方修繕費、これは費用です。
貸方現金預金です。これは実務上大事なのです。

修繕に必要な支出を全部費用にしてしまうと、税務調査で「おたく1,000万円で修繕費をあげているけど、このうち800万くらい建物の性能があがっていませんか?固定資産にして減価償却してください。全部費用にしないでください。」と損金不算入みたいになってしまうこともあるので、注意してください。

修繕の支出があったら、見積りで一式と一本で見るのではなくて細かく分析して、どれが費用でどれが基本的支出で資産が増えるかをちゃんとやらないと、あとでとんでもないことになります。

クライアントはあまり分かっていません。会計事務所の専門性を発揮するのはこういうところです。見積り書とか修繕支出の内訳を見て会計事務所が判断しなければだめです。

これを会社で判断しろと言ったら、会計事務所に顧問料を払っている意味がなくなります。基本的には会計事務所の職員が知っておくべきです。

何が改良で何が修繕かという判断を会計事務所の中で、守秘義務の範囲内で過去の事例を使って、見積書の見方、請求書や仕様書、支払いの内訳の見方を勉強して、会計事務所内の意思を統一したほうがいいです。

下手すると担当者がバラバラになって全部費用にならなかったりしたら大変なことになります。資本的支出なのか収益的支出なのか判断する力をつけたいです。

経理の専門家の第一歩です。試験には減価償却ほど出ませんが、実務では大事です。間違えたら大変なことになります。減価償却をして費用にならないと大変です。
ちゃんと区分けしましょう。税務調査でも修繕支出は論点です。

修繕支出の仕訳例です。建物を修繕するために300万円を普通預金口座から支払った。
このうち240万円は建物の改良(資本的支出)にあたるもので、残りの金額は定期点検と補修(収益的支出)にあたるもので60万です。仕訳は貸方普通預金300、借方建物240、借方修繕費60、これでいいわけです。

このようにやっていただければいいと思います。このパターンは大事で、実務でも使いますからしっかりと学んでください。何が資本的支出で何が収益的支出かの判断が会計事務所に求められている顧問料の範囲、専門性です。事例を何回かやればわかると思います。

新人、中堅、ベテランになるに従ってできるようになっていただくと使える人材として威力を発揮します。事務所で重宝されますからぜひ頑張ってスキルを上げてください。

まとめ

今回のまとめです。

建設仮勘定の処理のポイントです。建物を新規に建設したときの仕訳例です。本社ビル・倉庫・工場などの建物の建設を発注し、手付金を払いました。
一種の前払金みたいなものです。借方建設仮勘定、貸方現金預金です。建物が完成して引き渡されました。残額は月末払いとすると、借方建物という固定資産が請負金額で計上されます。請負価額以外でもいろいろあったらトータルで請求書がありますから、その請求書をもとに計上してください。

問題文では請負価額でやることが多いけど、実務ではトータルを見て、請求書等の書類をみて決めます。借方建物、貸方建設仮勘定、差額が未払金です。

2つ目、修繕です。これも実務上、年に何回か出ますので特に工場とか大きい会社は大事です。資本的支出は固定資産の価値を高める支出です。

改良や耐用年数の延長になるような修繕支出は固定資産の取得になります。借方建物、貸方現金預金です。収益的支出は定期点検や補修など、固定資産の機能維持のための支出です。
借方修繕費、貸方現金預金となることを知っておいてください。

今回は固定資産の取得に関しての建設仮勘定と修繕支出について学びました。
実務でも大事なところなので、試験対策とともにしっかりとイメージを持っていただければと思います。

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