「資本金」の基本的な意味
会社のバランスシート(貸借対照表)を見ると、右下の方にあるのが、「資本金」ですね。
貸借対照表
―――――――――――――――――――
|
(資 産) | (負 債)
|
|———
| (資 本)
| 損益計算書
|1資 本 金 S ―――――――――
|2資本剰余金 1売 上 高 ×××
|3利益剰余金 2売上原価 ×××
| ●利益準備金 : :
| ●任意積立金 ―――
| ●未処分利益 R ←←← 未処分利益 R
|4××× ===
| :
上記の「S」にあたる金額が資本金です。
ここで、資本金の定義を確認しておきますと、資本金とは、「企業が社内に維持すべき目安となる金額」のことです。
たとえば、あなたが商売を始めようとして、手持ちの自己資金100万円と銀行からの借入金80万円を用意し、ただちに60万円を商品の購入に当てたとします。
貸借対照表 (単位:万円)
―――――――――――――――――――
(資 産) |(負 債)
現金預金 120|借 入 金 80 ←いずれは返済する金額
商 品 60|
|———
|(資 本)
|資 本 金 100 ←社内に維持すべき出資額
|
――――| ――――
資産合計 180|負債資本合計180
====・ ====
このように、現金預金120万円と商品60万円という、資金の運用状態に対し、当初の出資額である「資本金100万円」相当の財産は、今後も、必ず維持していきましょうね、という趣旨が、上記の表にはこめられている
のです。
そして、その後、一年間の商売の結果、現金売上が200万円上がって、費用175万円(現金支出115万円+商品在庫の払出し60万円)がかかったとしましょう。
ここでは、費用175万円の一部として、当期中に商品60万円が出庫されたので、期末の商品残高は0と考えます。
貸借対照表 (単位:万円)
―――――――――――――――――――
(資 産) |(負 債)
現金預金 205|借 入 金 80 ←いずれは返済する金額
商 品 0|
|?????????
|(資 本)
|資 本 金 100 ←社内に維持すべき出資額
|利 益 25 ←・
――――| ―――― |
資産合計 180|負債資本合計180 | 損益計算書(略式)
====・ ==== | ―――――――――
| 売 上 高 200
| 総 費 用 175
| ――――
・←利 益 25
====
※現金205万円=期首120万円+売上入金200万円?費用115万円以上は、シンプルな取引例による数字の変化の確認ですが、これだけでも、重要な会計原理がわかります。
たとえば、一年前に出資された100万円の資本金に見合う額が維持されているかどうかの判断は、次のようにします。
●純資産(株主資本)の計算
総資産205万円?負債80万円=「125万円」>資本金100万円つまり、「総資産?負債」の額がいくら以上でなければならないのか、という経営者の財産管理責任の基準ともなる数字なのが、資本金なのです。
したがいまして、「総資産?負債」が資本金の額を下回っていたら、それは、「維持するべき資本」の額に見合った財産を残せていない、ということで、経営者の責任が問われる可能性が高まりますよね。
なお、利益25万円は、当期に稼いだ果実ですから、株主に還元する配当の財源となり得ます。
そして、この資本金と株式の関係ですが、昔は「額面株式」などというものがあって、一株あたりの資本金という金額に、それなりの意味がありましたが、現在では、株式の時価発行が基本であったり、額面株式自体がなくなっていた
りしますので、一株の価値と資本金の額は、あまり関連性がなくなりました。
むしろ、一株あたりの株主資本(純資産)のほうが、財務指標としては、非常に重要となります。(ROEの算定など)
なお、現在では、株式の種類が多様化されてきています。
典型的な株式である「普通株」、つまり議決権や配当などの権利が普通に付与されている株式のほかに、配当などの条件が優遇される代わりに議決権がない優先株をはじめとする、他の種類の株式がどんどん発行されるようになって
きています。
これも、会計を複雑にしている一つの犯人なのですが、さしあたり、「普通株は、議決権や配当について、通常の権利を表す株式」、「優先株は、議決権がなく配当について有利な条件が一般的な株式」
といった程度のイメージを持っていただければ、だいたいよろしいのではないか、と思いますよ。
なお、いずれも出資額として、株主資本を構成します。
以上、資本金という用語について、少しでも理解を深めていただければ、幸いです。
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