※例:会社の当期における売上原価(商品の出庫高=出庫原価)は90億円、期末時点で売れ残った商品在庫(原価)は10億円だった。
会社の
商品倉庫
・
/ -
/ -
/ 商品在庫 –
| ・―・ |
| |10| |
| ・―・ | 顧客
| ・・・ |(出庫)
| ・ ・ - 売上原価 ●
| ・ ・======・ 90 ■
| ・・・ /
| |
―――――――――
上記の場合、決算書(バランスシートと損益計算書)の表示は、次のようになります。
(商品代金は、すべて当期に現金で支払ったとします。)
※利益剰余金の内訳
↓
バランスシート 損益計算書
――――――――――――――――― ―――――――――
(資産) |(負債) 売上高 (省略)
現金預金 △100| 売上原価 △ 90
たな卸資産 10|(資本) : :
| ――――
|利益剰余金 △90 ←← 当期純利益 △ 90
――――――――――――――――― ====
トータル △ 90|トータル △90
=================
左の変動合計 = 右の変動合計
上記のうち、倉庫から出庫した分だけが、当期の費用(損益計算書上、利益のマイナス項目)として表示されます(売上原価90億円)。
なお、バランスシートの左側を見ると、たな卸資産という財産が10億円の評価額で表示されていますね。
この10億円は、「その在庫を取得するために要した支出」です。
ある財産を購入するために支払った額を「原価」といいます。覚えておきましょう。
で、たな卸資産のような在庫の評価は、「原価」、すなわちその資産を取得するために支払った額でおこなうわけです。
「資産の期末評価を原価の額とする考え方」を、原価基準といいます。
原価って、領収書や納品書などの証拠資料などで、税務署などの第三者に、その金額を立証しやすいですよね。
このように、立証性が高く、客観的な評価が可能なので、たな卸資産の評価は、現行の実務上、原価基準が原則となっています。
これに対し、もしもその商品の市況が値下がり傾向だとすると、もはやその商品は、購入時の10億円の価値があるとはいいがたいです。
たとえば、その商品の期末時点での価値(時価)が、9億円に下落していたとしたら、どうでしょう。
もはや、その在庫には、10億円の価値がないのですから、期末の決算手続で、1億円の評価損を決算書表示するほうが、慎重な経理であり、かつ経済実態に即しているのでは?
という問題意識も当然働きますよね!
そこで、
「期末時点で、在庫の時価が下がった場合には、慎重を期して、低い方の時価に評価替えしよう!」
という考え方があります。
このように、「期末時点で時価が下落している場合に、低くなった時価で資産を評価する」という考え方を、低価基準といいます。
決算対策としては、非常に大事な処理方法ですよ。
一定の要件を満たせば、税務上も費用として認めてくれます
ので、決算時には支出を伴わない費用を計上でき、節税にもなります。
※利益剰余金の内訳
↓
バランスシート 損益計算書
――――――――――――――――― ―――――――――
(資産) |(負債) 売上高 (省略)
現金預金 △100| 売上原価 △ 90
たな卸資産 9|(資本) 商品評価損 △ 1
| ――――
|利益剰余金 △91 ←← 当期純利益 △ 91
――――――――――――――――― ====
トータル △ 91|トータル △91
=================
左の変動合計 = 右の変動合計
※たな卸資産9億円(時価)=原価10億円?評価損1億円
このように、時価が下がった時だけ、たな卸資産を時価で評価する、という会計テクニック、意外に使われていないので、よかったら、ご自身の会社の在庫評価方法、原価基準で評価していないかどうか、および低価基準が使えないかどうか、さっそくチェックしてみて下さい。
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のことです。