自社株買いについては、これまで、本メルマガでも何度か取り上げさせていただいています。
本メルマガで取り上げるテーマは、その時々で目に付いた新聞記事が対象ですので、それだけ自社株買い(自己株式)に関する話題が繰り返し日経新聞に掲載されている、ということなのですね。
つまり、本メルマガでの掲載頻度をチェックし、日経新聞によく出てくるテーマを整理してみるのも、ひとつの楽しみ方
かも知れません。
「日経新聞の傾向と対策に、柴山のメルマガを」(笑)
さて、本題です。
自社株買いとは、「以前発行していた自社の株式を買い戻すこと」ですね。
買い戻した自社の株を自己株式といいます。
ここからは、ちょっとした事例を使って、一緒に考えていきましょう。
■1■ 株式100株を発行した。1株の値段は10万円。
バランスシート
―――――――――――――――――――――
(資産) |(負債)
現金預金 1000|
|
|(純資産)
| 資本金 1000
| 利益剰余金 0
―――――――――――――――――――――
借方合計 1000|貸方合計 1000
=====================
■2■ 一年間で2000万円の利益を計上した。
この間に増えた資産は、現金500万円、
棚卸資産(在庫)300万円、固定資産1200万円。
バランスシート
―――――――――――――――――――――
(資産) |(負債)
現金預金 1500|
棚卸資産 300|
固定資産 1200|(純資産)
| 資本金 1000
| 利益剰余金2000
―――――――――――――――――――――
借方合計 3000|貸方合計 3000
=====================
■3■ 当期中に、株主への利益還元のため、自社株を20株買い戻した。
買い戻し時の株式時価は18万円だった。
バランスシート
―――――――――――――――――――――
(資産) |(負債)
現金預金 1140|
棚卸資産 300|
固定資産 1200|(純資産)
| 資本金 1000
| 利益剰余金2000
| 自己株式 △360
―――――――――――――――――――――
借方合計 2640|貸方合計 2640
=====================
※自社株の金額:20株×18万円=360万円
以上が、典型的な自社株買いまでのストーリーとなります。
もしも利益がたくさん出て、潤沢な資金が手に入ったならば、その使い道の一つとして、株主から自社株を買い戻す、という方法も視野にいれなければならない、というのが現代の経営戦略の特徴です。
この点、以前は「株主平等の原則に反する」などの理由で、自社株買いは、よほどの例外でない限り、商法で禁止されていました。
私が公認会計士受験生だった1990年頃は、まさに自社株買いが全面禁止の時代だったので、今と較べると隔世の感があります。
しかし、ここで注意していただきたいのは、儲かったらなんでもかんでも自社株買い、というわけではなく、ほかに有効な使い道が無かったら、という場合にこそ有効である、ということです。
ほかに企業価値を高める機会があるならば、そこに資金を振り分けるべきでしょう。それが社長の経営判断というものです。
ちなみに、自社株買いの状況は、次の4つの財務諸表のうち、3つに掲載されます。
1.バランスシート(貸借対照表)
2.損益計算書
3.株主資本等変動計算書
4.キャッシュフロー計算書
それでは、上記の中で自社株買いがまったく表示されない決算書はどれでしょうか。
:
:
はい、答えは「損益計算書」です。
自社株の取得状況は、下記の手順で確認できます。
●株主資本等変動計算書の「当期変動額」で、自己株式が当期中にどれだけ増えたかを確認する。
↓
●期末のバランスシートの「純資産の部」で、結果として、どれだけの自己株式が社内に残っているかを確認する。
↓
●上記の一連の流れを捕捉する情報として、自社株買いにより、どれだけ資金が流出したかをキャッシュフロー計算書の「財務活動によるキャッシュフロー」で確認する。
※自社株買い、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー等
⇒ http://bokikaikei.net/03kaikei/252.html
このようにしてみると、自社株買いは、営業活動とは関係のない、会社と株主の間の財務取引だから、業績を表す損益計算書には反映させないんだ、ということがわかると思います。
以上、自社株買いに関連する決算書表示を横断的に解説してみました。
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