新株予約権の意味と、「希薄化」の問題

新株予約権とは、「あらかじめ決められた価格(行使価格)で、株式を購入することができる権利」のことです。
社債とワンセットで発行されることもあり(新株予約権付社債)、単独で発行されることもあります。

新株予約権を購入した投資家は、事後、一定期間内ならば、たとえばその時の株価が「行使価格」を上回ったときに、権利行使して新株を買えば、株価と行使価格の差額だけ、キャピタルゲイン(値上がり益)を手にすることができますね。

上記は新株予約権を購入する「投資家」の立場のメリットです。発行会社としても、新株予約権を発行後に株価が上昇すれば、投資家の権利行使に応じて資本を増強できることと、転換社債型という形式なら、負債である社債を返済不要の資本金等に転嫁できるため、自社にとって資金調達上有利となるケースも多いです。

企業の資金調達方法が多様になる、という点が特徴的ですね。
なお、企業が新株予約権を発行すると、下記のようなバランスシートになります。

(例1)A社は、新株予約権を発行し、10億円の払い込みを受けた。
    
           バランスシート
    ―――――――――――――――――――――
    (流動資産)    |(流動負債)
     現金預金   10|
              |(固定負債)
              |
    (固定資産)    |(純 資 産)
              |
              | 新株予約権  10
           ―――|       ―――
      計     10|  計     10
           ===        ===

その後、権利行使が行われ、追加の払い込みがなされると、下記のように、原則として、資本金に振り替えられます。

(例2)新株予約権の発行後、新株予約権の行使を受けて
    株式を発行し、90億円の払い込みを受けた。

           バランスシート
    ―――――――――――――――――――――
    (流動資産)    |(流動負債)
     現金預金  100|
              |(固定負債)
              |
    (固定資産)    |(純 資 産)
              | 資 本 金  100
              |
              | 新株予約権   0
           ―――|       ―――
      計    100|  計    100
           ===        ===

以上のように、新株予約権の行使により、あらたに株式が発行され、資本金も増えます。
ここで問題となることの一つに、「希薄化」という現象があります。

希薄化とは、株式の発行数が増加することにより、従来と同じ利益の額でも、一株あたり利益の額が減少したり、
安価で新株が発行されることによって、一株あたりの価値が従来よりも低くなる、という現象を言います。
上記のA社のケースなどでは、追加の払込み90億円に対しては、新株の発行があるわけですから、分母の発行済み株式数が増加し、その分だけ一株あたりの利益の額は、減少しますよね。

               当期純利益
 ● 一株あたり利益 = ―――――――――
              発行済み株式数  ←増加!

もちろん、この希薄化が生じることによって、従来から株式を持っていた既存の株主が不利益をこうむります。

新株予約権の行使で、安価に株式の交付を受ける株主が出てくることから、既存の株主にとっては、新株予約権の発行は、あまり歓迎されることではないのですね。

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