売上高の本当の意味、きちんと説明できるようになりましょう。

売上高は、損益計算書の一番上に表示される、最も重要な情報のひとつです。

              損益計算書   (億円)
      ――――――――――――――――――――
      1 売  上  高       1000
      2 売 上 原 価        600
                      ――――
             売上総利益     400
      3 販売費及び一般管理費     330
                      ――――
              営業利益      70
               :        :

ここで、上記の売上高1000億円とは何か?について、説明することができるでしょうか。

「え?売上高は、売上高でしょ?」
はい。
そうですね。

なんとなく、「売上」という言葉の日常的なぼんやりとした感じで、分った気にさせられてしまいます。
では、もうちょっと突っ込んだ質問をします。

「売上に関する活動って、どこからどこまでをいうのでしょうか。」
「…」

さあ!困ってきましたよ!
でも、このような足元を突いたような基本的な質問に、案外答えられない、というのが普通でしょう。
逆に、答えられたら、ある意味たいしたものです。
ビジネスってものをよく分っている証拠です。
では、これから、あなたにも、「ビシーッ」と説明できるようになっていただきましょう。
まず、「売上に関する活動」ですが、次のようにご理解いただけるとよろしいでしょう。

「売上に関する活動とは、商品の問合せから代金の決済までを含んだ、一連の業務の流れである。」

これですよ、これ!
では、一般的な例を図にしますね。
売上に関する活動(販売活動)の流れ

 1 問合せ(既存客ならば、省略もあり。)
    ↓
 2 受注(注文・契約)
    ↓
 3 製品の用意(生産、または仕入)
    ↓
 4 出荷(引渡し)
    ↓
 5 検収(先方の受取確認)
    ↓
 6 請求書の発行
    ↓
 7 入金
 
…いかがです?
ざっと見ただけでも、7つものステップがあるのですね?
そして、極端な話、上記の1「問合せ」から7「入金」までの時間差(タイムラグ)は、へたすると数ヶ月や半年にも及びます。
ひとくちに売上活動といっても、これだけの幅があるんですよ。

だから、会計ルールとしても、ある程度はきちんとした指針を決めておかないと、各企業の都合で、適当に売上を計上されてしまい、単純に企業間で財務諸表を比較できなくなってしまいます。
もちろん、利益の計算や税金の計算をする上でも、大きな支障となります。
そこで、こうかんがえます。

「いったい、どの段階が、「売上が確実になった!」と社会通念上、言えるだろうか。。。」

あなたなら、どの段階だと思いますか?
まあ、単純に考えれば、

「どの段階で、「商品代金の受け取りがほぼ確実」といえるか」

という問題です。

結論を申しますと、「商品の引渡し時」には、売り手も買い手も「商品を引き渡したのだから、売買成立だよね!」と納得するし、売上代金も確実になったといえるだろう、という解釈が一般です。

 1 問合せ
    ↓
 2 受注(注文・契約)
    ↓
 3 製品の用意(生産、または仕入)
    ↓
 4 出荷(引渡し)        ←←←☆この段階(=実現!)
    ↓
 5 検収(先方の受取確認)
    ↓
 6 請求書の発行
    ↓
 7 入金
 
このように、売上活動の各プロセスで、「売上が実現した!」と誰もが認められる段階の手続をもって、売上高を計上しましょう、という考え方を、「実現主義の原則」といいます。
そして、実現した、といえるもっとも決定的な段階は、引渡しの事実があったときですね、と一般に考えます。
細かい用語の説明はよいとしまして(会員制CDの更新特典DVDでは、この点について説明いたします!更新された方はお楽しみに!)、
ともあれ、「売上の計上日=原則として実現した日(実現主義)」ということを、覚えておいて下さい。

そして、その根拠は、「計算の確実性・客観性」です。
実際、出荷の事実は、出庫表や納品書の出荷日の記載などで、比較的容易に立証ができますので、やはり信頼性は高いです。
これが、たとえば契約書を交わした受注日で売上を上げたらどうでしょう。
あとで変更や順延されるリスクも高いですし、注文取り消し、なんていうこともしばしばです。
だから、原則として、通常の商品販売では、受注段階で売上を上げないのが普通です。

ここで、ITのシステム開発などを考えてみてください。
あれって、商品が現物としてあります?
ないですよね。
だから、ものの動きがわからないので、売上の操作をしやすいんです。

だって、「プログラムの納品」なんて、素人がどうやって目で確認するのか、っていったら、実際無理です。
やおやさんが「大根を引き渡した日(売上)」はわかりやすいですが、IT業者が「システム・プログラムを引き渡した日」というのは、目で見て分りにくいです。
しかも、プログラムの一部だけ稼動できるようなタイプの分割納品だったら?
「…ああ、頭がおかしくなりそう!」
そうなんです。
だから、売上計上のルールは、会社の経理規定でしっかりと明示し、それを遵守するような内部管理の体制を、構築しなければならないのですね!
今流行の言葉で、「内部統制(ないぶとうせい)」とうやつです。
では、ここで冒頭の質問に戻りましょう。

              損益計算書   (億円)
      ――――――――――――――――――――
      1 売  上  高       1000
      2 売 上 原 価        600
                      ――――
             売上総利益     400
      3 販売費及び一般管理費     330
                      ――――
              営業利益      70
               :        :

(問)ここで、上記の売上高1000億円とは何か?について、
   説明することができるでしょうか。

はい。もう大丈夫ですね。

(答)上記の売上高1000億円は、一般に、商品の出荷高(引渡高)
   が、年間に1000億円ほどある、ということを意味している。

いかがですか?
受注高とか、入金高ではなく、商品を引き渡した時に、売上を計上するんだ、ということを、この機会に知っておきましょう!

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