在庫の評価損が、そろそろ気になり始める会社も…?

現在、上場企業を中心に、業績が好調です。
これは、日経新聞をみて、誰もが知っていることですね。

しかし、はたと身の回りを見ると、

「ほんとうに、いざなぎ景気を超えたって、いえるのかな??」

と、いっぱい疑問符がつく、という実感をお持ちの方も多いことでしょう。

そうです。

過去最高益とか、法人申告所得がバブル期の水準に戻ったとかいうわりには、まだ世間では黒字の企業が全体の30%くらいしかいない状態なので、残り70%の苦しさを肌で感じているわれわれとしては、どうにも腑に落ちない「好況?」現象なのですね。

ただ、一部はたしかに、かなりハイパーな好調さを維持していたりしていますので、そのような場合はイケイケで生産・購買を拡大しています。

で、はたと見ると、在庫が結構増えているじゃない?

なんていうことは、好況期にはよくあることで…

大事なことは、「利益があるうちに、バランスシートを慎重にチェック」することですね。

とくに、いつも私がしつこくしつこく申し上げる科目に、

「売上債権」
「棚卸資産」
「有利子負債」

の3つがあります。

まずは、この3つに、最初の歪みの兆候が出やすい。

で、今回は、在庫の評価についてのお話ですね。

在庫というのは、いうまでもなく、

「将来の需要を見込んで、先に支出して仕込んだ製品・商品」

のことです。

当然、一般にはキャッシュを先に払っています。

(例1)A社は、新株を発行(=増資)し、現金を100万円受取った。

            B/S
     ―――――――――――――――――
     現金預金+100|資 本 金+100
             |
     棚卸資産   0|

(例2)その後、商品を購入した。

            B/S
     ―――――――――――――――――
     現金預金   0|資 本 金+100
            ↓|
     棚卸資産+100|

この結果、株主から調達した資金は、棚卸資産という在庫投資に化けました。

このまま売れなければ、もちろん、会社にいっさいキャッシュは入ってきませんね。

つぎに、新株発行ではなく、銀行借入で在庫を購入した、としましょう。

(例3)B社は、運転資金として銀行から期間1年で借入れをし、現金を100万円受取った。利子率は3%であった。

            B/S
     ―――――――――――――――――
     現金預金+100|借 入 金+100
             |
     棚卸資産   0|
(例4)その後、商品を購入した。
            B/S
     ―――――――――――――――――
     現金預金   0|借 入 金+100
            ↓|
     棚卸資産+100|

…この場合の、後々の恐ろしさが、なんとなく想像つきますよね。
(恐怖その1)売れなければ、金利負担が重くなる。

(例5)利息3万円を支払った。

            B/S
     ―――――――――――――――――
     現金預金▲  3|借 入 金+100
            ↓|
     棚卸資産+100|利  益▲  3

(恐怖その2)元本の返済は待ったなし。

(例6)一年後、借入金を返済した。

            B/S
     ―――――――――――――――――
     現金預金▲103|借 入 金   0
            ↓|
     棚卸資産+100|利  益▲  3

…この100万円、どこから調達することになるんでしょうかねえ。

金利の高い○○○金融??

いずれにせよ、在庫が予定通りはけなければ、財政状態が悪化することは、目に見えてます。

ちなみに、ここではあえて触れませんでしたが、この間、倉庫の建物にかかる固定資産税、光熱費、修繕費、担当者の人件費など、あれよあれよというまに、時間が過ぎた分だけ、金を食っていきます。

「売れない在庫は金食い虫である。」

もっているだけで、人・物・金が浪費されていきます。

なお、過剰在庫、不良在庫となった棚卸資産で異常なものは、決算上、「商品評価損」などの名称で、損益計算書の特別損失の区分に表示されることが多いですね。

(例7)一年後の決算で、過剰在庫の評価を半分に下げた。
    評価差額は、商品評価損として、特別損失に計上した。
    ※営業外費用は、支払利息である。

            B/S
     ―――――――――――――――――
     現金預金▲103|借 入 金   0
            ↓|
     棚卸資産  50|利  益▲ 53
                     ↑
                     ↑
            P/L      ↑
        ―――――――――    ↑
        売上高   ×××    ↑
         :           ↑
        営業外費用   3(?)→↑
         :           ↑
        特別損失   50(?)→・

まあ、上記はやや極端なケースですが、他の売上があがっていて、動きが活発な商品に隠れて、B社のように、借金して仕込んだ在庫が不良化し、資金繰りを圧迫している、なんていうケースは、けっこう多いと思いますよ。

また、たとえ今は大丈夫でも、将来はわかりませんよね。
一本調子で上り続けていく景気というのは、古今東西ありえないことですので、好業績でありながら、5期トレンドで、在庫がハイスピードで
膨張気味の会社担当者の方、経営者の方は、ぜひ、お金がある今のうちに、しっかりと在庫の見直しをしてくださいませ。

バランスシートをじっくりと分析した上での資産マネジメント、すっごく大事ですよね。
留意しておきたいものです。

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