まずは、連結財務諸表の基礎知識です。
連結財務諸表とは、「親会社が、子会社の財務諸表も合算し、グループ全体の業績を報告するために作成する財務諸表(決算書)のことです。
◆連結決算の流れ
(1)子会社の個別財務諸表を、必要に応じて修正する。
(2)親会社の個別財務諸表(B/S、P/L)と子会社の個別財務諸表を単純に合算する。
(3)親子間の取引や、グループ内で生じた含み益(未実現利益)を相殺消去するなどして、一定の決算修正を施す。
(4)関連会社(主に、持ち株割合20?50%程度の会社)の株式を、持分法(関連会社等の業績に応じて、株式の評価を上げたり下げたりすること)により、評価する。
以上の4つが、連結決算のポイントになります。
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今回は、上記のステップのうち、(2)の段階に関係します。
では、以下、事例で見ていきましょう。
A社は、10億円を出資して、100%子会社B社を設立した。
B社は、ほかに20億円を借り入れた。
A社B/S-1
――――――――――――――――――――
諸資産(A)390|諸負債(A) 200
・→☆子会社株式 10|純資産(A1)200
| ――――――――――――――――――――
| 計 400| 計 400
| ====================
|
・――――――――――――――――――――――――・
↓
B社B/S-1 ↓
―――――――――――――――――――― ↓
諸資産(B) 30|諸負債(B) 20 ↓
|純資産(B1) 10☆←・
――――――――――――――――――――
計 30| 計 30
====================
☆A社B/Sにおける「子会社株式10」とB社B/Sにおける「純資産(B1)10」は、グループ全体としてみた場合、互いに重複している項目なので、連結決算上、単純合算後に相殺する。
(詳しくは、やさしい現代会計・中級講座をご参照ください。)
一年後、A社は60の利益を上げ、その分だけ諸資産(A)と純資産(A2)は、60億円ずつ増加した
いっぽう、B社は15の利益を上げ、諸資産(B)と純資産(B2)を15億円ずつ増加した。
A社B/S-2
――――――――――――――――――――
諸資産(A)450|諸負債(A) 200
・→☆子会社株式 10|純資産(A1)200
| |純資産(A2) 60
| ――――――――――――――――――――
| 計 460| 計 460
| ====================
|
・――――――――――――――――――――――――・
↓
B社B/S-2 ↓
―――――――――――――――――――― ↓
諸資産(B) 45|諸負債(B) 20 ↓
|純資産(B1) 10☆←・
|純資産(B2) 15
――――――――――――――――――――
計 45| 計 45
====================
※2 A社B/S-2とB社B/S-2の単純合算
「A社+B社」B/S-2
――――――――――――――――――――
諸資産(計)495|諸負債(計) 220
☆子会社株式 10|純資産(A1)200
|純資産(A2) 60
|純資産(B1) 10☆
|純資産(B2) 15
――――――――――――――――――――
計 505| 計 505
====================
※3 A社の連結貸借対照表(連結修正後)
A社連結B/S
――――――――――――――――――――
諸資産(計)495|諸負債(計) 220
|純資産(A1)200
|純資産(A2) 60
|純資産(B2) 15 ←B社の儲け
―――――――――――――――――――― が、A社連結上
計 495| 計 495 とりこまれた。
====================
上記で見てわかるとおり、B社で稼いだ利益15億円は、A社連結B/Sに取り込まれました。
この点において、きちんとB社の黒字が連結決算に反映していますね。
つぎに、子会社が赤字のケースです。
一年後、A社は60の利益を上げ、その分だけ諸資産(A)と純資産(A2)は、60億円ずつ増加した
いっぽう、B社は13の赤字となり、諸資産(B)と純資産(B2)を13億円ずつ減少させた。
この結果、B社は3億円の「債務超過」となってしまった。
A社B/S-2
――――――――――――――――――――
諸資産(A)450|諸負債(A) 200
・→☆子会社株式 10|純資産(A1)200
| |純資産(A2) 60
| ――――――――――――――――――――
| 計 460| 計 460
| ====================
|
・――――――――――――――――――――――――・
↓
B社B/S-2 ↓
―――――――――――――――――――― ↓
諸資産(B) 17|諸負債(B) 20 ↓
|純資産(B1) 10☆←・
|純資産(B2)△13
――――――――――――――――――――
計 17| 計 17
====================
※2 A社B/S-2とB社B/S-2の単純合算
「A社+B社」B/S-2
――――――――――――――――――――
諸資産(計)467|諸負債(計) 220
☆子会社株式 10|純資産(A1)200
|純資産(A2) 60
|純資産(B1) 10☆
|純資産(B2)△13
――――――――――――――――――――
計 477| 計 477
====================
※3 A社の連結貸借対照表(連結修正後)
A社連結B/S
――――――――――――――――――――
諸資産(計)467|諸負債(計) 220
|純資産(A1)200
|純資産(A2) 60
|純資産(B2)△13 ←B社の損失が
―――――――――――――――――――― A社連結上
計 467| 計 467 とりこまれた。
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この結果、B社で計上した赤字分13億円は、連結上、きっちりと(?)A社の業績の足を引っ張ってることが、あきらかとなります。
結局、「B社に投資した子会社株式10億円」がパーになり、さらに、「3億円もの追加の赤字(債務超過分)」をも、
背負い込んでしまった、ということになります。
この損失は、親会社であるA社が負担します。
以上、子会社の黒字・赤字を連結決算に取り込むプロセスを、A社・B社という比較的シンプルな計算例を用いて、一緒に考えてみました。
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