柴山政行氏(以下、柴山):お金の貸し借りをした時にも当然帳簿に書き残さなければいけませんが、その書き方について勉強します。
進行:今回ももかさん、りょうたくんの2人と一緒に勉強していきます。
昨日の復習です。
お金を借りたケイイチ君は、貸してくれた銀行と約束事を決めて「契約書」という書面に残しました。では、どんなことを約束したのか覚えていますか?
もかさん(以下、もかさん):返すまでの期間と借りる金額を決めました。
りょうたくん(以下、りょうたくん):それと、利息を決めました。
柴山:ばっちりですね。
契約書には「借りた金額」「利息」「返済の期日」などを書きました。
ところで、お金を返すことを「返済義務」というのは既に学びましたが、ここでは「義務」と「権利」について考えてみたいと思います。
ケイイチ君がお金を借りたことによって、どのような権利と義務が発生するのでしょうか。
ケイイチ君は契約書のとおりにお金を借りて返済する義務があります。
「義務」というのは、人に対して何かをしなければいけないという、マイナスなイメージがあるということを頭の片隅に入れておいてください。
逆に「権利」というのは、人に対して要求できるという、良いイメージがあるということがわかれば良いでしょう。
では次に、どんな権利や義務があるのかについて考えてみます。
ここで問題です。
ケイイチ君は、大好きなアイドルグループ『KKB(キッズ・ケー・ビー)』のコンサート代金を支払いましたが、ケイイチ君には権利と義務のどちらがあるのでしょうか。そして、その内容を考えてみてください。
りょうたくん:権利です。
柴山:では、その内容はわかりますか?
りょうたくん:『キッズ・ケー・ビー』のコンサートに行ける権利です。
柴山:そうですね。
歌を歌ってもらって楽しめる権利があります。
では、逆にアイドルの立場からすればどんな義務があると思いますか?
もかさん:歌わなければいけない義務です。
柴山:その通りです。
『キッズ・ケー・ビー』はお金をもらっている以上、歌わなければいけない義務があるのです。
このように、権利と義務は1つの取引に対して双方にそれぞれ発生するものなのです。
進行:権利と義務がどういうものなのかはわかりました。
では、借り入れたお金は帳簿にどう書けばいいのかということを考えていきます。
ところで、今までの竹とんぼのルールにはどういうものがあったか覚えていますか?
りょうたくん:現金が増えたら左で、減ったら右に書きます。
進行:サービスを受けた場合はどちらに書きますか?
りょうたくん:左に書きます。
柴山:完璧ですね。
進行:では、お金を借りた時にはどう書くのか、先生に解説をしてもらいましょう。
柴山:借り入れは将来にお金を返す約束をしているので、「減る」というイメージを持ってください。
減った場合はどちらに書きますか?
もかさん・りょうたくん:右です。
柴山:そのとおりです。
マイナスなので、「借入金」という竹とんぼの右側に「-500,000シバ」を書きます。
今まで、竹とんぼの右側はマイナスというふうに勉強してきましたが、
マイナス側に-500,000と書いた場合は、竹とんぼも金額もマイナス同士になるので、竹とんぼのプラスとマイナスを逆にして、数字のマイナスも外します。
ということは、右側がプラスの竹とんぼに500,000シバを書くということになるのです。
ちなみに「借入金」の「金」というのは「お金」の意味ではなくて、借り入れた「金額」の意味です。
ここは大人も間違えやすいのです。
進行:竹とんぼのアタマはいつも左がプラスなのに、それが逆になって、さらに数字のマイナスの記号を取ってしまったということですね。
柴山:義務はマイナスイメージなので、マイナスイメージのものが初めて出たときに借り入れになります。
一番最初にマイナスイメージが出たので、右のマイナスをプラスに変えたということです。
わかりましたか?
もかさん:ちょっと難しいです。
柴山:将来出るものが右にくるのです。
進行:そのうち返さなければいけないですし、返すということは減るということなので、とりあえず右側に書いておくということですか?
柴山:そうですね。
その一方で、借り入れをしたことによって普通預金のお金が増えているので、この場合はどうなりますか?
もかさん:増えています。
柴山:その場合はどちらに書きますか?
りょうたくん:左です。
柴山:その通りです。
普通預金の竹とんぼの左側に500,000シバを書きます。
これはどういうことかというと、預金は増えたけれど、一方で減る約束をしたという意味で借入金の右側に書くのです。
このように2つを並べて書くのがお約束なのです。
進行:「借入金」の竹とんぼは「約束の竹とんぼ」ということですか。
柴山:そうです。
普通預金は「嬉しい竹とんぼ」なので左側がプラス、借入金は「悲しい竹とんぼ」と考えて、右と左を逆にします。
2つの竹とんぼを並べて書くと言いましたが、これを「複式」といいます。
2つ出てきたら「複式」、1つの場合は「単式」と覚えてください。
複式簿記は映し鏡で、何かを得たら何かを出すという考え方ができます。
ギブは与える、テイクはもらうことです。
その2つの行為を竹とんぼで表現するということです。
今回の借り入れについても、得るものと出すものがあるのです。
借り入れというのはお金を返さなければいけないので、プラスとマイナスどちらのイメージがありますか?
もかさん:マイナスです。
柴山:マイナスイメージの場合は竹とんぼのどちらに書きますか?
もかさん:右側です。
柴山:その通りです。
借り入れはマイナスイメージで、義務があるから右側だと思ってください。
では、預金が増えたらどちらに書きましたか?
りょうたくん:増えたら左側に書きます。
預金は嬉しいものだから左側がプラスになります。
借り入れは義務を伴って悲しいものだから右になります。
では、ここで練習をしてもらいましょう。
進行:銀行から24万シバを現金で借り入れした場合、複式竹とんぼで書いたらどうなるのか、答えてください。
……では、答えを見せてください。
もかさんは、左の竹とんぼのアタマは「現金」で左側に240,000シバと書いて、右の竹とんぼのアタマを「借入金」として右側をマイナスにして240,000シバと書いています。
りょうたくんも同じですね。
柴山:2人とも正解です。
現金が増えたので「現金」の左側に金額を記入して、一方で、借入という義務が発生したので、「借入金」の右側に金額を書きます。
このように、1つの取引について2種類の竹とんぼを使うと、表現力が豊かになります。
たとえば、「現金」の竹とんぼが1つだけしかないと、現金が増えたことはわかっても、なぜ増えたのかという原因がわかりません。
一方、「借入金」の竹とんぼしかない場合は、何が増えたのかがわかりません。
どちらか1つしかないと情報が偏るのですが、2つの竹とんぼを書くことによって、その取引全体を大きな目で見ることができます。
柴山:1番目、お金を借りた場合は、将来にお金をきちんと返す約束をします。
これを返済の義務といいました。
2番目、「義務」は人に何かをしなければいけないことで、「権利」は人に何かを要求できることです。
義務はマイナスのイメージ、権利はプラスのイメージと覚えてください。
3番目、お金を借りた場合は「借入金」の竹とんぼの右側に借りた金額を書きます。
進行:今日は複式簿記の考え方が出てきましたが、どうでしたか?
もかさん:今までで一番難しかった気がしますが、練習をすれば出来そうな気がします。
りょうたくん:簿記の本当の顔が少しずつ見えてきたような気がします。
進行:では先生、次回の内容を教えてください。
柴山:明日は「自己資金の意味を考えよう!」というお話です。
第1週でも学びましたが、ケイイチくんは自分で貯めた30万シバを元手としてお店に入れましたが、このような「自己資金」と「借入」の違いや、自己資金を出すことによって得られるメリットなどを学びます。
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