この説明を聞いていただくことによって、柴山式総勘定元帳の意味もわかってきます。
まずは取引例を見ていきましょう。
①材料1,000を掛けで仕入れた。
仕訳は、借方は材料1,000、貸方は買掛金1,000となります。
材料は資産、買掛金は負債になります。
②材料1,000のうち540は製品No.10に投下された。
受注生産なので、No.10という製品、あるいは、次に出てくるNo.20という別の製品があります。
1つ1つに個性がある、オーダーメイドの製品だと思ってください。
1,000の材料を仕入れたうちの540は、No.10という製品に投下して消費されました。
製品No.10に投下された段階では未完成で、未完成の品物のことを「仕掛品」という資産勘定になります。
仕訳は、借方が仕掛品(10)540となって、貸方が材料540となります。
「(10)」は補足です。
借方は資産である仕掛品が540増えて、貸方は材料が540減りました。
③材料360は製品No.20に投下された。
仕訳は、借方が仕掛品(20)360となって、貸方が材料360になります。
No.20の未完成品が360増えて、それと引き換えに材料倉庫から360の在庫が出荷されて消費されました。
貸方は材料の消費で、それによって借方は未完成品が増えたと考えます。
④材料100は接着剤や軍手などの間接材料だった。
材料というのは部品や製品の原材料としてだけではなく、工場で消耗される接着剤、機械油、輪ゴム、釘などや、工場で使用される机や文房具なども消耗品で、間接材料費となります。
工場で消費される物品はすべて材料費となります。
製品を構成する原材料や部品だけではなくて、消耗品関係も材料費になって、これを間接材料といいます。
なので、この100の材料は、特定の製品に集計できないので、間接材料という扱いで「製造間接費」という費用項目にいったん迂回させます。
これがポイントです。
この場合の仕訳は、借方が製造間接費100で、貸方が材料100になります。
初心者の方は、②③の仕掛品への材料の振替と、④の製造間接費へ迂回させる部分がわからなくて迷うのです。
仕訳だけだとピンと来ないので、そのようなときに柴山式総勘定元帳を使うのです。
柴山式総勘定元帳は、十字を書いて、さらに十字の縦線の右側に横線を引くと、5つのエリアに分けることができます。
左上は資産エリアで、資産科目が集計されます。
右上が負債エリアで、負債科目が集計されます。
商業簿記の場合は中心に十字を書くのですが、工業簿記の場合は資産と費用のやり取りが圧倒的に多いので、十字の縦線を右に寄せて、左側に多くのスペースをとります。
資産エリアには材料と仕掛品の勘定を、費用エリアには製造間接費を、負債エリアには買掛金勘定を記入します。
①の仕訳を転記すると、材料勘定の左側に1,000と買掛金勘定の右側に1,000を書きます。
②の仕訳を転記すると、仕掛品が増えるので、仕掛品勘定(No.10と20の合計)の左側に540と書いて、材料勘定の右側に540を書きます。
材料540から仕掛品540へ数字の受渡しがされていると考えてください。
資産から資産への540という価値の受渡しです。
③も②と同じように考えます。
④の仕訳ですが、先ほど申し上げたとおり、特定の未完成に集計できないので、いったん迂回します。
材料勘定の右側に100と書いて、費用エリアにある製造間接費の左側に書きます。
これは、いずれ間接労務費や間接経費とすべて合わせて、まとめて仕掛品に振り替えますので、いったん遠回りするのが製造間接費のグループだと思ってください。
製造間接費は費用の集まりで、これを複合費といいます。
間接材料と間接労務費と間接経費がまとまって、たとえば、直接作業時間などの時間数に応じてNo.10やNo.20に配分されます。
いずれ仕掛品に振り替えられますが、いったん遠回りするので、④だけは異質なのです。
なぜかというと、軍手や接着剤というのはNo.10やNo.20の部品や原材料を構成しているものではないからです。
このような大ざっぱなイメージをもって、柴山式総勘定元帳を5回から10回ぐらい書いてみてください。
感覚として工業簿記がわかります。
私が公認会計士の受験生時代には工業簿記が苦手だったのですが、それは、このT字勘定の受渡しが出来なかったからなのです。
その挫折から柴山式総勘定元帳が生まれました。
このT字のおかげで、私は独学で工業簿記が得意になりました。
工業簿記の理解にこそ柴山式総勘定元帳が役に立ちますので、みなさんも良かったら使ってみてください。
今回は柴山式総勘定元帳について、材料費の計算を用いてアウトラインを示してみました。
このT字勘定をメモ用紙にでも書いてみてください。
工業簿記が得意になります。
工業簿記が苦手な人の半分以上は、勘定連絡がわかっていないのです。
これがわかるだけでも、工業簿記が得意になります。
頑張ってください。
私はいつもあなたの日商簿記検定の合格を心より応援しています。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。
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