問1のアは会計方針の変更に伴う論点で、総平均法における前期末の商品残高を求める問題です。
柴山式の簿記1級であれば例題にもほぼ類似の問題が出ていますし、過去にもこの手の問題が出たことがあるので、対策はできると思います。
しかし、ある程度の計算をしなければいけないし、計算過程でミスをしてしまうと点を失ってしまいますから、出来なくてもしようがないと思います。
ただ、ア・イ・ウ・エ・オのうち、イの備品の残高、ウのリース資産、エのリース債務、オの社債は点を取りたいので、4点が目標だと思っています。
問2は、問1のアと関係しますが、前期まで総平均法だったものを当期に先入先出法へ変える内容で、仕訳が2種類あります。
5行あるうちの2行目以降は日商検定1級の伝統的な基本論点ですが、ほぼ簿記2級レベルなので、ポイントなのは1行目です。
「借方 繰越商品252」「貸方 繰越利益剰余金252」で、たぶん2点ではないかと思っています。
あるいは、そのすぐ下の先入先出法による評価「借方 仕入10,440」、「貸方 繰越商品10,440」まで全てセットにして2点かもしれませんが、私のイメージだと1行目の仕訳のみで1点か2点だと思います。
おそらく問2は6点だと思うので、問1が5点、問2が6点、問3は1ヶ所1点で14点なので、非常に配点がしやすいのです。
ただ、問2の1と2の量にかなり差があるので1の決算整理仕訳と2のストックオプションを同じ配点にするのはどうかと思うので、3+3ではなく、1が2点+2点で4点、2の株式報酬費用が2点で合わせて6点だと思います。
繰越商品と繰越利益剰余金の仕訳が間違っても2点を失うぐらいで、その下の仕入は出ます。
その下の「借方 繰越商品」「貸方 仕入」と、棚卸減耗損と商品評価損はそれほど難しくないので、ここは4点取って欲しいです。
これは資料として見られるようにサイトにアップしておきますので、リンクをクリックして見てください。
柴山式の簿記1級受講生の方には、この計算過程などの解説レジュメはいずれ配布します。
問3は決算整理後の数値で、14ヶ所あります。
備品の減損損失の配分と法人税調整額の2つは落とすと思っているので、14個のうち12点、イージーミスが2ヶ所ぐらいあったとしても10点を目標に得点して欲しいと思います。
目標は問1が4点、問2が4点、問3が10点で、合計18点は狙って欲しいと思います。
問3でイージーミスがなければ12点取れるので、20点狙える問題ではあります。
柴山式のテキストと例題にも載っていますが、会計方針の変更による遡及修正の仕訳ができれば23点ぐらいまでいける可能性はあります。
もちろん簡単ではありませんが、丁寧に積み上げていくと20点が狙えます。
今回の商業簿記の大きな論点の1つが会計方針の変更で、最近は典型の論点になりつつあります。
あとは見積りの変更といったところも新しい会計基準で出てくるようになりました。
「問1のア」と「問2の1」についてお話をします。
x1年度とx2年度は前期で、当期はx3年4月1日からx4年3月31日です。
当期は先入先出法で前期は総平均法で、当期首の繰越商品残高は決算整理前で10,188千円になっています。
その後、10,440千円に変わります。
この「繰越商品」が期首商品の先入先出法による再評価です。
これをもって改めて決算整理をすれば良いのです。
今回の商業簿記は良問なので、この問題で20点以上取れるようになると実力がついていると言えます。
これは問題文に書いてあるx1年度からの期首の商品と仕入状況を私がメモしたものです。
問題文には100円未満は四捨五入して100円単位まで出すように指示されているので、千円単位だと「80.8」のように小数点1位まで出すということです。
x1年度の期首残高は100個×80、第1回の仕入は1,000×78、第2回の仕入は800×82、第3回の仕入は600×84で、202,000÷2,500=80.8となります。
x2年度の期首残高は空欄になっているので、正解は80.8となります。
x2年度の第1回仕入は1,250×84、第2回仕入は800×85、第3回仕入は800×87で、計算すると254,720÷3,000=84.906・・・と割り切れない数字になりますが、問題文の指示どおり100円未満は四捨五入して合計は84.9になります。
これによってx3年度の期首は84.9×120個=10,188という数字が出せます。
これが先入先出法に変わるとどうなるかという話ですが、x2年度の第3回仕入800という数字はx3年度期首の120個の一部なので、87×120個=14,400が今期の決算整理の数字になります。
決算整理前試算表の総平均法における金額は10,188なので、10,440と10,188の差額252を「借方 繰越商品252」という形で追加計上します。
次に、前期に遡って損益を修正しますが、前期の損益は繰越利益剰余金の当期首残高に振り替えられているので、「貸方 繰越利益剰余金252」とします。
これは連結会計で出てくる修正仕訳の開始仕訳に似ていますので、このような会計上の変更を勉強すると、資本連結などの開始仕訳の勉強になります。
過年度の損益の修正は当期首の繰越利益剰余金、あるいは前期末残高を修正します。
期末商品棚卸高は130個×88千円=11,440なので「借方 繰越商品11,040」となります。
棚卸減耗損は5個×88=440になります。
商品売買価格が86なので、商品評価損は(88-86)×125=250となります。
ここは将来似たような問題が出てもおかしくないぐらいの典型論点になりつつありますから、この機会にできるようになってください。
ここはある程度落としても18点以上は取れますが「仕入繰商 繰商仕入」は簿記2級レベルなのできちんとやってください。
遡及修正に関する期首の繰越利益剰余金の部分や問1のアは落としてもしようがないと思います。
きちんと勉強すれば少なくとも18点ぐらいは取れるので、15点以下だった方は多少力不足かなと思います。
今回の問題はあなたの学習の到達度がわかる一つの試金石になる良問だと思ってください。
今回の商業簿記の問題を初めてトライして18点以上取れたらGOODです。
17・16点はグレーゾーンです。
15点以下の場合はもう少し基礎力をつけたほうが良いので、テキストや例題をやり直して欲しいと思います。
次回の簿記1級にトライされる方は、これを活かして頑張ってください。
私はいつもあなたの簿記1級合格を心から応援しています。
ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。
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