大野晃氏(以下、大野):最後のほうは答えが見えるようになるので、電卓を叩くのが嫌になりますよね。
柴山政行氏(以下、柴山):何回分を25周したのですか?
大野:得意な問題ばかりやっていることに気付いたので、嫌な問題を25周やることによって、嫌な問題が好きになるという形になりました。
柴山:過去問以外に総合問題は何かやりましたか?
大野:直前答練で出た問題に関しては、同じものを10周くらいやっていました。
僕の中では正の字を書くのが好きだったのです。
それが自分の自信になるという感じです。
柴山:総合問題は何回分ぐらいやりましたか?
大野:ほとんど確実に20周以上はしました。
正の字が必ず4つ付くことが自分の自信に繋がっていました。
柴山:過去問を解くのに最初はどれくらいの時間がかかりましたか?
大野:ほとんど0点に近いです、取れるわけがないですからね。
過去問は応用なので、基礎の問題から変化されていますから。
その場合は、解説を見ることを繰り返していきました。
これは3時間とか4時間かけてやるのは本当に辛かったですね。
柴山:そういうときは落ち込んだりしましたか?
大野:受からないだろうと思いましたね。
柴山:柴山式簿記講座で、みなさんが相談してくる内容で一番多いのは、過去問を見て解けないと思って打ちひしがれてしまうということです。
そこを乗り越えないと受からないのですが、みなさんそこで嫌になってしまうのです。
誰でも最初に過去問をやったときには絶望を感じると思いますが、絶望的な気分にはなりましたか?
大野:いえ、過去問は本試験と同じですから、解けるわけがないです。
それと、私は過去問を解くときにストップウォッチを使ったことがないです。
なぜなら、過去問は解けないとわかっていたので、全部答えを見ながらやっていたからです。
柴山:たしかに、最初は答えを見ながらやりますよね。
それをやらない人が多いのですよ。
大野:真剣にやったって時間内でできないのに、時間を計っても無駄ですよね。
だから、私は、過去問はすべて答えを見ながらやって、2周目には答えを見ないでやってみたらどうなるかっていう、ただそれだけでした。
柴山:1回目の過去問との付き合い方はみなさん悩んでいるところなのです。
多くの方は解いてしまうのですが、それでできないと、解答を見ながら1日かけて理解する人がいますけど、それは時間が勿体ないですよね。
大野:だから、私はテキストには戻らなかったですね。
解説どおり素直に書いていくという感じです。
柴山:そのときは、1回で理解しようとしてやっていましたか?
大野:そんなことはないですね。
本試験というのは、今まで見たことが無い問題を解くわけですよね。
今までそういうアウトプットをやったことがないので大丈夫かなというふうには思いましたが、繰り返して体に染みこませることしか考えていませんでした。
簿記1級は型どおりに出る問題が多いですよね。
型どおりに出ないのは、多分、意思決定とかの原価計算ぐらいだと思います。
私は、商業簿記は型どおりだと思っていますし、会計学もほぼ型どおりだと思っています。
工業簿記も型どおりなので、私にとってのネックは原価計算だけということになりました。
過去の問題を見ると、3分の1は意思決定が出ていないので、1年に1回くらいは意思決定が出ない回に当たるのではいかと思いました。
これはリスキーなやり方かもしれませんが、私の中では税理士に受かりたいということだったので、余計にそれがモチベーションを下げました。
柴山:3回に1回は意思決定が出ないから、そのときに取りに行こうということですね。
大野:この後受ける税理士試験で役に立たないのにやってもしようがないという気持ちがありました。
柴山:ある意味潔いですよね。
普通の受験生って、何が出ても対応できるように深くやるから何をやっても中途半端に終わってしまうけど、意思決定が出たらもう諦めるという感じだったのですね。
大野:そこで私が意思決定したのですね(笑)
柴山:今の話を聞いて思ったことは、絶対に次の試験で受かろうというわけではなくて、3回受けたらそのうち1回でも得意なところで、3打数1安打でOKという考えですよね。
大野:話は逸れますが、さきほど連結会計は公認会計士のテキストまでやったと言いましたが、税理士試験には出ないのにどうしてあれだけやったのかというと、連結は簿記1級の過去問で相当出ていたから、「これはやらないといけない」と思ったら、意外と好きになってしまいました。
ある意味、連結のパターンがありますよね、だから連結は大好きだったのです。
私が税理士試験を受けたときは、簿記論は応用的なものが多かったので2回落ちましたが、税法は型どおりだったので1発で受かりました。
そして、簿記1級をやっていて良かったと思ったのが、簿記論で連結会計が初めて出題されたのですが、あれは簿記1級の連結の基礎問題でしたから、あの時は5分で解いて25点を確信しました。
「ありがとう簿記1級」と思いましたね(笑)
柴山:そういえば、税法のうち、贈与税は答練で全国2位だったらしいですね。
大野:そうです。
柴山:型どおりだと強いということですね。
簿記1級の話に戻しますが、1回目のときは58点で落ちたのですか?
大野:そうですね。
だからちょっと不思議でしたね。
連結はこの年には出なかったのですよね。
私は111回の簿記1級に合格したのですが、その2回前の108回の試験は得意分野が何も出ていなくて、唯一、標準原価計算が出たのですが、これも型どおりにいかなくて、このときにはロット差異が出ました。
あれは斬新で、型どおりにやっている人には無理な問題ですよね。
「こんなの知らないよ」となって、撃沈してしまいました。
ただ、不思議だったのが、足切りは一切ありませんでしたね。
だから、「これで58点取れたら良いか」という感じで、逆に自信になりました。
柴山:すごいですよね、簿記2級が20パーセントなのに(笑)
大野:普通の人だったら落ちて落ち込むと思いますが、私の場合はヒーローになりたかったので、落ちてラッキーだと思っていました。
なぜかというと、再受験すればさらにパワーアップして、記録を塗り替えられると思ったからです。
逆に、受かってしまうと、「頂点にいったらまた違う世界にいくのかな」と思って、寂しくなってしまいます。
柴山:2回目の受験はどうだったのですか?
大野:2回目は、恐れていた設備投資が出てしまいました。
たしか、あそこの部分の考え方をプラスマイナス逆に考えていました。
私の中では、「このひらめきは俺だけじゃないのか?」と思いましたが、他に頭の良い人が「あれ、プラスだね」って言ったので、「ああ、0点だ」と思ってしまいました。
設備投資が出た時点でやる気を無くしてしまって、その回は58点以下の点数でしたね。
ただ、私は「3分の1」に賭けていたので、「まあしようがないか」と割り切りました。
柴山:サバサバしているのが良いですね。
大野:次の回には意思決定がもっと得意になっている可能性もありますからね。
3回目のときには、当時にしては珍しいインフレーションまで学んだ状態で臨みましたから、ある程度、自分の中の意思決定の知識は増えていました。
だから、3回目は自信がありました。
柴山:そして3回目で合格されたのですよね。
大野:111回の簿記1級は記念回と呼ばれていて、商業簿記は型どおりだったのですが、会計学は、未学習の金利スワップの仕訳は何の勘定科目を使えばいいのかもわからないし、当時の人からしてみたら意味不明ですよね。
柴山:あれは当時からすると会計士レベルですね。
大山:金利スワップ以外のものもそれほど簡単ではなかったので、足切りになる可能性があるかもしれないと思いました。
あとは、工業簿記の、標準原価の追加配賦の問題で、当時は加工費の配賦は工程別で配賦するパターンはあまりなかったのですが、ある学校で昔からやっていた工程別の配賦だったので、何の問題もなくできました。
ただ、ショックだったのは、加工費の配賦に関して間違えがあったことを試験が終わったあとにわかったので、「ちょっとやばいな」と思いました。
だけど、10点は切っていないだろうと思いました。
それと、原価計算は大好きだったセールスミックス差異が出たので、ラッキーだと思いました。
もう、型どおりじゃないですか、あれは。(つづく)
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