今回は「貨幣の時間価値、現価と終価」というテーマについてお話をしたいと思います。
現価というのは「現在の価値」という意味で、終価というのは「終わりの価値」です。
利子率は現価と終価の間で数字が変わってきます。
たとえば利子率10パーセントの世界では、今が100円であれば1年後は110円となります。
110のうち100は元本で、10は1年かけたことによる利息です。
現在の価値と終わりの価値の比較が会計上重要になるというお話をします。
簡単な取引例を用意したので見てみましょう。
(問題)
1.今、10,000円を利回り(割引率)5%で運用したら、3年後はいくらか。
2.1円を利回り5%で運用したら、3年後はいくらか。
3.3年後の1円は、利回り(割引率)5%なら、現在いくらか。
1と2は今の金額を3年後の金額に置き換えますが、3番だけは将来と現在が逆になって、将来の1円が今いくらになるかを求めます。
たとえば0.9円や0.8円など、利息の分だけ抜きますからそれだけ少なくなります。
将来の金額は利息と元本の合計ですが、現在は元本だけです。
それでは答えを見ていきましょう。
1についてですが、今10,000円を利回り5%で銀行に預けたとすると、10,000×0.05で500を足します。
ということは、かけ算をすると10,000×1.05で10,500になります。
元本と利息の合計を新たな元本とみなす利息の計算方法を複利計算といいますが、複利計算をします。
つまり、10,500を新たな元本として1.5を掛けます。
そうすると、2年後には11,025になります。
11,025のうち10,000が今の元本で、1,025は2年間の利息です。
そして11,025を新たな元本とみなして、さらに利息の計算をします。
11,025×1.05で、11,576.25円となります。
ということは、今の10,000円というのは、5%の利回りの世界では、3年後の11,576.25に等しいということです。
3年後の11,576.25円は、5%の利回りを間において、現在の10,000円と等しい価値があります。
この状況のときに、今の価値を現在価値、あるいは現価といいます。
現価というのは現在価値の略で、あるいは割引現在価値と言う場合もあります。
そして、終わりの価値のことを終価と言います。
ということで、割引率という言い方をしますが、利率が影響をします。
では2番目です。
今の1円を利回り5%で運用しましたが、これは一般的な形です。
1円をベースに使うといろんな金額に使えます。
1円を5%で運用すると、1×1.05で1.05円になります。
0.05が利息です。
この利息0.05を加えて、新たな元本として、1年後は1.05×1.05で1.1025になります。
今の1円からすると、1円×1.05の二乗で1.1025になります。
では、2年後に1.1025円を新たな元本として、これに1.05をかけると、利息がまた加わって、1.157625円となります。
これを終価係数といいます。
今の1円を3年運用したら3年後にいくらになるかです。
たとえば、1番の問題では、10,000円×1.157625とやれば11,576.25となりますし、今の元本が20,000円ならば、5%の金利の世界では、3年後は20,000×1.157625という係数をかけた金額になります。
20,000×1.157625は23,152.5となります。
終価係数は便利で、この係数が分かればどんな金額でも3年後の価値がわかります。
そして3番目ですが、これは今の2問とは逆のパターンでよく使います。
たとえば3年後に1円の収入があったとして、これを1.05で割ると、1÷1.05で0.9524となって、これが3年後の1円の2年後の価値です。
さらにこれを1.05で割ると、0.9070になります。
本当はさらに小数が続きますが、下5桁か6桁ぐらいで四捨五入することが多いです。
0.9070をさらに1.05で割ると、現在の元本が0.8638であるということが分かります。
つまり、現在の0.8638円は、5%の世界で3年間運用すると1円になります。
3年後の1円が終価とするならば、現在価値は0.8638となります。
これを現価係数といいます。
そうすると、3年後の20,000円は現在いくらかというと、20,000×0.8638=17,276と出ます。
このように、求めたい3年後の数字がたとえば500,000円ならば、500,000円×0.8638とすれば計算できるので、便利です。
将来の価値と現在の価値を繋ぐ簡単な式がありますが、それが「1÷(1+r)n」です。
rは年利で、nが年数です。
nの部分は10年ならば10乗すればいいのです。
これが現価係数の出し方です。
現価と終価の間を取り持つのが利回りだということを知っておいてください。
これはいろんなところで使える知識です。
これはリース会計もそうですし、減損会計、退職給付会計や、売掛金などの貸倒引当金を設定するときにも使うことがあります。
時間価値は日商簿記検定1級レベルになるといろいろなところで使います。
原価計算や工業簿記にも使いますので、ぜひ知っておいてください。
私はいつもあなたの簿記1級学習を心から応援しております。
ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。
PREV
流動固定分類と流動性配列法【簿記1級】
|
NEXT
銀行勘定調整表②【簿記2級】
|