戦略と戦術のちがい【経営戦略を学ぶ】

今回は「戦略と戦術の違い」というテーマでお話をしたいと思います。

 

「戦略」と「戦術」という言葉がありますが、戦略はどちらかというと長期的な全体像を描くイメージがあって、その時々の局面で上手くやるというイメージがあります。

私も会計事務所を経営していて、クライアントである社長さんの話などを聞くと、社長さんの関心はどうしても日常をどう上手くやるかという、戦術的なことに目がいってしまいがちです。

 

一歩引いた形で、今自分がやっていることが本当に効果的なのか、自分の努力がきちんと報われるような形で効率が高いかという、もう少し大きな目で見た大局的な判断が少し疎かになっていると思うことがあります。

 

つい最近も何件か新規事業の相談を受けていますが、そのあたりの全体のデザインというのは、なかなか世の中の教育機関や書籍などでは知ることができないので、この機会に動画などでお伝えできればと思っています。

 

中小企業の社長さんというのは戦術的なことへ行きすぎてしまう場合があります。

自分のやっていることが「もう少し横を見れば上りのエスカレーターがあるのに、下りのエスカレーターで一生懸命上に上ろうとあがいてる」という状況になっていることがあります。

 

「上りのエスカレーター」にきちんと乗れるかどうかということも踏まえて、正しい戦い方のルールや全体的なシナリオの書き方のようなものもこの機会にご理解いただければと思います。

 

いろいろ書きましたが、戦略と戦術を一言で表してみると、これはランチェスター経営株式会社の「小企業の経営戦略」というものを参考にしています。

 

これは竹田陽一先生が作られたカリキュラムです。

私の手元にありますが、通信教材として売られているものです。

 

日本の90パーセント以上の企業は、この基本原則を熟知すればかなり経営では失敗する確率が低くなると思っています。

 

それぐらい経営の要点が盛り込まれていて、ランチェスター経営に関する話も折に触れてしていこうと思っています。

 

要するにこれは「弱者の戦略」です。

元々資本力がある上場企業のような力の強い企業は圧倒的な力があります。

 

野球でいうとかつての巨人軍みたいなものです。

強打者揃いで力で押し切るというタイプもあるのですが、そのような会社は一部であって、その他大勢は、昔ヤクルトの野村監督が言っていた「弱者の戦略」が必要になります。

 

弱者は弱者なりに研究をして、焦点を絞り込んで、限られた資源を大事なところへ集中させて強者に立ち向かうのが一番いいのです。

 

この「弱者の戦略」ということを踏まえてお話をますと、「戦略」というのは「将軍の術」、そして「戦術」は「兵士の術」と言われています。

 

将軍というのは兵士全体を上から見渡して采配を振るいます。

「将軍」というのは、会社では社長です。

 

社長はどういうことを考えるのかということがここに書かれていますが、順に見ていきましょう。

 

①戦いの大義名分を決める

②戦力の優劣を比較(情報)

③主力の兵器と組み合わせ

 

④中心の戦場とその範囲

⑤どのような陣組(システム)か

⑥戦術リーダーと部隊の人数

 

⑦補給のルートと方法

⑧軍資金の調達と配分

⑨作戦計画書と戦闘計画書

以上が戦略についてです。

 

①についてですが、そもそも「戦い」というのは誰だってやりたくはないのです。

人を殺したり殺されたりというのは危険もたくさんあるし、痛いし、怖いですから、やりたくないのです。

 

仕事にしても、朝出勤して、下げたくもない頭を下げるわけです。

自分と気が合う人だろうと合わない人だろうと、相手が取引先だったらニコッと笑って話をしたり、場合によっては接待をしたり、相手に合わせる必要があります。

 

やりたくない仕事もたくさんあるでしょう。

そもそも仕事や戦争というのは、やりたくないものです。

 

やりたくないことをやるときには「このためにやっているのだ」という、それなりに大きな大義名分が必要です。

 

「嫌なことだけれど、このために自分はやっているのだ」という、自分を納得させるような「言い訳」が必要ですので「大義名分」というのは嫌なことをやるときの言い訳なのです。

 

その言い訳に価値があると思えれば思えるほど、やりたくないことでもやる気になります。

本来やりたくないことを無理矢理やるためには、どうしても大義名分が必要なのです。

どうでもいいことをわざわざやる人はいません。

 

「これをやらないと世の中が立ち行かない」「これをやることによって日本はもっとよくなる」など、そのように思えるからやるのです。

これは将軍が決めることです。

 

次に②ですが、これは意外と疎かになっているのですが、私も起業した人の話を聞いていると、ライバル企業やマーケットの情報をきちんと掴んでいない人がいます。

 

情報戦略がなっていないのです。

面倒臭がって情報を取ろうとしていないのです。

これではだめです。

 

戦力の優劣だけではなくて、お客様との関係もあるので、お客様の情報やライバル企業の情報をできるだけ取り込んで分析します。

 

③についてですが、これはどういう「武器」で戦うかということです。

大砲で戦うのか、戦艦で戦うのか、航空機で戦うのか、何で戦うのかによって全然違います。

会社でいうと、「武器」は「主力商品」です。

 

④については、会社でいうとマーケットです。

どの地域、どの客層をターゲットにするかです。

戦場を間違えると、戦争の範囲が拡大していまいます。

 

かつての第二次世界大戦のように、戦争の場所が広がって、日本という小さな国があまりにも広い戦場を相手にしてしまい、最後は立ち行かなくなります。

 

末路を見るとかなり大変でしたので、戦場を広げすぎたのも1つの原因だったのかもしれません。

 

私は戦争の専門家ではありませんが、一般論で考えて、身の丈を超えた戦場の拡大というのはお金も足りなくなるし人も足りなくなります。

 

⑤についてですが、どういった仕組みで戦うかということです。

⑥は、つまり人の配置で、会社でいうと人事のことです。

⑦と⑧は財務戦略に近いです。

 

⑨についてですが、「作戦計画書」というのは「経営計画書」で、「戦闘計画書」は「実行計画書」です。

こういった将来の基本計画と実施のための具体的な実行計画を作ります。

 

作戦計画書と戦闘計画書というのは①から⑧を集約したもので、この戦闘計画書に基づいて戦術があります。

続いて「戦術」についてです。

 

①将軍の方針に従って持ち場につく

②将軍の方針に従って行動する

③戦いに勝てるよう、日頃から訓練する

④道具を使う

 

⑤手や体を動かす

⑥繰り返し的である

⑦汗を流す仕事

以上が戦術です。

 

①は、戦闘計画書どおりに持ち場につくということです。

②は、戦闘計画書どおりに行動するということです。

したがって、将軍の方針が間違えていたら大変なことになってしまいます。

 

または、本当は作戦の失敗なのにもかかわらず、それをごまかして作戦の失敗を隠してしまうと、その先にもっと大きな失敗へ繋がるということもあるので、失敗する戦略を優秀な兵士が実行すると、あとでもっと悲惨なことになるのです。

ですから、戦略は大事な上位概念なのです。

 

③は自己啓発や教育訓練などで、日頃から訓練します。

④についても戦術で、道具を上手くつかうことです。

 

⑤⑥⑦を見ていると、どれも仕事をしている気になります。

中小企業の社長さんや個人事業主の方はどうしてもこちらへいってしまいます。

 

汗を流して一生懸命やることは大事ですが、そもそも、その戦闘計画、戦場、システム、陣組、人の配置、資金繰り、すべて正しいですかと問いたいです。

 

間違った計画に基づいて一生懸命繰り返しの作業をしてしまうと、もっと大きな被害を生みます。

だから戦略は上位概念で大事だということなのです。

 

ここを社長さんは一生懸命考えるべきなのです。

「戦略(将軍の術)」と「戦術(兵士の術)」の違いをぜひ意識していただいて、今後も戦略の研究に取り組んでいきましょう。

 

私はいつもあなたの戦略能力の向上を心から応援しております。

ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。

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