「問題」と思うことのほとんどは「現象」にすぎない

今回は「『問題』と思えることのほとんどは『現象』にすぎない」というテーマでお話をしたいと思います。

 

「ザ・ゴール」という本で有名な制約理論というものがありますが、制約理論で考えていることの1つの重要なコンセプトに、思考プロセスというものがあります。

その思考プロセスの中でボトルネックになることを見つけましょうとか、いろいろな対症法がありますが、望ましくない影響の連鎖だというふうに考えるところがあります。

 

これはUDE(undesirable effects)と言います。

要するに「望ましくない影響」ということです。

何か問題だと思うことがたくさんあります。

 

たとえば、不景気なことも問題かもしれませんし、自分の営業成績が上がらないことも問題ですし、会社の業績が上がらないことも問題ですし、人間関係が上手くいかないことも問題です。

 

これを問題と思って直接そこに働きかけて解決しようとしますが、実はそこにジレンマがあるのです。

 

問題というのは連鎖があって、Aという原因があってBという結果があり、さらに結果Bが原因となってCという結果を生み出すというように、物事には連鎖があります。

 

原因と結果の連鎖がずっと続いて、最後に出てくる結果について私たちはフォーカスするのですが、そうすると元の原因があるのです。

 

大本の原因を見ずに、最後に出てきた些末的な枝葉の結果だけを見て、そこを問題と考えてしまうから、なかなか一番重要な議論ができなくなってしまうのです。

 

我々が問題だと思っていることのほとんどが、実は現象にすぎないのだということを検証してみましょう。

2つの問題を取り上げてみます。

 

1つ目は、売上が伸びないという問題です。

私がコンサルティングを受けるときのほとんどの問題がこれです。

 

売上が伸びないから皆悩んでいるのです。

売上があれば大抵のことはなんとかなるのです。

 

2つ目の問題は、成績が上がらないということです。

私が簿記の指導をしていると「成績を上げるにはどうしたらいいですか」という質問を受けます。

 

ここを問題と捉えてしまうのですが、実はここは問題ではなくて、ただの現象なのです。

これがただの現象にすぎないということを今から考えてみたいと思います。

 

まず「売上が伸びない」ということについてですが、これは一見問題に見えますが、売上が伸びないということに直接働きかけて変えようとしても無理なのです。

 

「売上を伸ばすにはどうしたらいいか」ということを考えることは、最終的な現象の周辺をウロウロ回っているだけで、まったく解決ができません。

 

「売上が伸びない」というのは現象にすぎないので、これに働きかけることはできないのです。

 

「売上が伸びない」というのが現象ならば、「なぜ売上が伸びないのか」ということを掘り下げる必要があるのです。

 

そうすると、よく出てくるパターンとしては、「客数が減っている」ということがあります。

もう1つは「値下げ競争」です。

そうすると、売上が伸びないのは現象であるということに気づきます。

 

売上が伸びないのは、客数が減ったという原因からもたらされる現象ですし、あるいは値下げ競争が激しくなったことによる現象なので、「売上が伸びない」という現象をいくら考えても問題解決にはなりません。

 

つまり、「売上が伸びない」というのは問題ではないのです。

我々が、あなたが、問題と思っていることの9割以上は実はただの現象にすぎません。

 

こう考えると、頭がスカッと変わってきます。

実はコンサルティングのポイントはここなのです。

 

客数が減ったということも原因ですが、これも対処としてはまだ甘いのです。

「客数を減らさないためにはどうしたらいいか」というのも少し抽象的なので、さらにこれを結果と考えて、客数が減ったことも現象と考えます。

 

では客数が減ったという現象をもたらす原因は何かを考えます。

このように掘り下げていくと、だんだん中核の問題に近づいてきます。

 

結局、客数が減ったことの原因はそもそも新規の客数が減ったということと、あるいは訪問数が減ったことによって普段の人間関係が悪くなってしまったということが考えられます。

 

客数が減るということは離脱なので、離脱をするということは訪問数が減ったり接触が減ったということです。

 

だんだん掘り下げるほど問題は具体的になっていき、原因が見えてきます。

1つの大きなコアとなる問題を押さえれば、上の現象は綺麗に変わるわけです。

 

これがいわゆる「扇の要」なのです。

今の段階で考えられる範囲で一番コアな部分に治療を施すのです。

 

「値下げ競争」についても理由はいろいろありますが、やはり担当者は人間ですから、訪問数が減ったことによって人間関係が疎遠になって悪化したというのも値下げの原因です。

 

だから、親しくしていて、ある程度共感している人に対して「値下げしろ」とはあまり言わないのです。

したがって、値下げ競争というのは人間関係なのです。

 

人間関係や訪問数というのは客数の問題にも値下げ競争にも関係してきます。

そうするとこれはコアとなり得ます。

 

このように、問題だと思っているものはすべて現象にすぎないと考えて、さらにその現象をもたらした原因を掘り下げて、大本をたどります。

 

こういったやり方が「多くの問題はただの現象にすぎない」ということの1つの本質なのです。

 

もう1つの例である「成績が上がらない」というのも問題ではなくて1つの現象として定義します。

 

「成績が上がらない」という現象をもたらしている原因は何かを考えます。

たとえば「勉強時間が足りない」「練習量が少ない」ということがあります。

 

練習量が少ないことも問題といえば問題ですが、単に「じゃあ練習量を増やそう」というだけでは根本的な解決にはなりません。

 

なぜ練習量が少ないかということを考えると、その前段階で1つ1つのインプットが遅いのではないかという原因が見えてきます。

 

そうすると、今度はインプットが遅いのを現象と考えて、1つ1つのインプットが遅い原因を掘り下げます。

 

たとえばその人の性格に起因する場合があります。

1つ1つのことが完璧に理解できないと先に行けないという理由もあると思います。

 

では、「勉強時間が足りない」ということについてですが、これも問題ですが、ここで思考をストップさせて「じゃあ勉強時間を増やそう」と言って根性で頑張っても無理です。

 

勉強時間が足りないことを現象と捉えて、なぜ勉強時間が足りないのかということを考えると、「他にやることが多いから」という理由が見えてきます。

 

そして、他にやることが多いのはなぜかということを考えます。

「雑用が多い」「テレビを観る時間が多い」「ゲームをする時間が多い」「スマホをやっている時間が多い」など、いろいろあるわけです。

 

こうやってどんどん原因と結果の連鎖で考えます。

一見問題と思うものも現象なのだと考えると、思考のトレーニングにもなります。

こういうことを考える人がリーダーになっていくのです。

 

問題はただの現象と考え、その現象をもたらすコアとなる原因を突き詰めて、自分達が対処できるレベルまで落とし込んでから対策を練るのが本当にやるべきことではないかと思います。

 

これは仕事や勉強や人間関係にも使えることなので、参考になさってください。

私はいつもあなたの成功を心から応援しています。

ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。

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