今回はお悩み相談のコーナーということで、視聴者の方からのご相談にお答えしたいと思います。
お悩みやご質問などの募集をしたところ、早速いくつかの相談がありましたので、そのうち1名の方を選んでご紹介したいと思います。
この方は柴山式簿記講座1級の受講生の方です。
まず、ご質問の主旨です。
質問1.公認会計士と税理士の違いについてまだ明確に分からないところがあるので、教えてください。
質問2.将来、会社に残るべきか、あるいは別会社(会計事務所)に行くべきか。
このような主旨の内容なのですが、ご質問を読ませていただきたいと思います。
「お世話になります。柴山式簿記1級講座の受講生です。いつも動画を視聴させていただいております。『お悩み相談、質問、お便り、コメントを受け付けます』を見てメール書きました。
私の悩みは、1.公認会計士と税理士の違い 2.今後の方向性、会社に残るor別会社です。」
現在、インターネットを通じて販売を行う会社で仕入と販売業務を行う部署にいらっしゃったそうなのですが、昨年の暮れ頃に会計事務所から転職のお話が来たということで、転職のチャンスがあったらしいのです。
おそらく経理の仕事に興味があったのかもしれませんが、そういったことを上司の方に相談したところ、希望が叶って、社内で財務関係の部署への異動ができ、転職はしなくて済んだということです。
その後、もっと会計の技術を磨きたいと思って簿記1級を目指してみようと思い、インターネットで柴山式簿記1級講座を受講したということです。
当初はまったく意味が分からなかった簿記1級ですが、本日までコツコツと進めてきて、ミニ例題ならばおよそ解けるようになったとのことです。
ミニ例題というのは柴山式簿記講座の1つの特徴で、講義の内容の復習のような形で、全範囲を広く浅く網羅した基本的な問題で、例題よりも簡単です。
例題というのは本試験を意識した結構実践的な問題なのですが、簿記1級が難しいと感じる方向けに用意したものです。
商業簿記・会計学が160問ぐらい、工業簿記・原価計算が140問ぐらいあって、何回か回転すると全範囲の知識が身に付くようになっています。
これがだいたい解けるようになったということは、very good!!です。
簿記1級の基礎知識は問題ありません。
実践的な問題を繰り返せば簿記1級の合格は目の前です。
そういったことを踏まえて、将来、簿記検定1級に合格した先の話ということです。
簿記1級に合格したとして、来年に税理士試験に挑戦したいと思っているそうです。
ここで質問1の公認会計士と税理士の違いについてです。
税理士に挑戦はしたいのだけれど、会計士と迷っているそうです。
税理士は中小企業が中心で、公認会計士は上場企業が中心となりますので、税理士ということは未公開企業だと思いますが、税理士の先生とお会いして仕事の打ち合わせや協議を行います。
ですが、公認会計士の人と会うことはなかなかないかもしれないです。
2つ目は、今後の方向性として、以前から社長さんから「いずれは今の会社で財務担当の責任者のポジションとしてやらないか」という打診があったようです。
こんなことを言ってもらえることは滅多にないので、すばらしいことです。
この質問者の方は上手にステップアップをされている方だと思うので、悲壮感がなく前向きでいいと思います。
ご本人としては会社の仲間も社長も好きだということです。
これだけを聞くと「他の会社に移る必要はないのではないか」と言われそうですが、本人としては違う世界を見てみたいという気持ちもあるようです。
「違う世界で力を試してみたい」「新しい可能性にチャレンジしたい」という気持ちは分かります。
今の会社の環境には満足されているようですが、他の業種でもやってみたいという気持ちがあるようです。
資格取得は必要となりますが、どちらにすればいいのか迷う部分があるとのことです。
では、私なりに回答をしたいと思います。
まず1つ目の「公認会計士と税理士の違いについて」です。
簡単に言うと、まずは対象とする会社が違います。
税理士は「街のお医者さん」というイメージです。
主に中小企業を対象としています。
そして、上場企業や大企業が中心で、そこから中小企業にいくという、トップダウンのような形が公認会計士です。
両者の共通点は、簿記と会計の専門家ということです。
コンサルティングするならば、税法を中心とした中小企業の街のお医者さんというような役割を担うのが税理士さんです。
日本の会社の95パーセント以上は中小企業ですので、9割以上の会社は税理士のフィールドなのです。
上場企業というのは3,600社ぐらいですし、商法上の大企業(資本金5億円以上)を含めても1万社ないと思います。
世の中にはだいたい300万社ぐらいの会社がありますし、個人事業も含めると400万から500万程度あります。
そのうちのほとんどが税理士の先生方が対象とする街の中小企業です。
対象とする会社数は圧倒的に税理士のほうが多いのです。
会計士は会社数は少ないですが、1社あたりの規模が大きいのです。
上場企業や大企業に対する組織的な管理・監査に関する相談を受けます。
私も監査の仕事をやっていたこともありますが、大きい会社の話ですからたしかにやっていて面白かったです。
会計士の仕事は綺麗にスマートにやるイメージがありますが、私はどちらかというと泥臭くいくのが好きなのです。
綺麗なホームランを打つような仕事よりは、送りバントでホームスチールのような形でも犠牲フライでも点を取ってもいいというくらい泥臭いやり方を好むので、私は中小企業のコンサルティングのほうが合っていると思っています。
税理士も会計士も簿記・会計を扱うのは同じですが、上場企業の監査・マネジメントを中心にやるのが会計士で、上からのマネジメントのようです。
一方で税理士は草の根の街のお医者さんというイメージです。
大雑把に言うと、総合病院が会計士だというイメージです。
監査法人には自由度がないので割とサラリーマン的なイメージもありますが、綺麗な仕事ではあります。
会計士は自分で登記簿謄本を取りに行ったりはしないので、逆に言うと実務の細かい部分は意外と勉強する機会がありません。
そのため、監査法人からいきなり独立するというのは厳しいのかもしれません。
私の場合は、監査法人を辞めた後、個人の会計事務所に勤めてワンクッション置いてから独立しました。
会計士は本当の意味の実務は自分ではやらず、チェックだけをしますので、本当に草の根の実務をやろうとしたら、税理士のほうがいいです。
税理士は税法の専門家で、会計士はチェックしたりコンサルタント的な側面が強いです。
会計士では会社法と経営学をやります。
実は税理士を目指す場合に1つアドバイスがありますが、ぜひ会社法と経営学を独学でやってください。
税理士試験で1つだけ不満があるのが、会社法と経営学の基本を受験科目に入れてほしいということです。
そうするとコンサル面では会計士と同等のレベルになるのではないかと思っています。
税法に関しては確実に税理士試験を突破した人のほうが強いと思います。
会計士も勉強はしていますが、あとから独学でやるので、税法の掘り下げ度は税理士に比べて浅いです。
ただし、会社経営というのは税法だけではなく、販売や、特に会社法、取締役会の役割や株主総会や株式の発行については会社法で学習します。
会計士はこれを受験勉強でやっているので、会計士は楽なのです。
会社法の勉強を受験でやらない税理士さんはかわいそうなのです。
ゼロからやると会社法はつまらないのです。
百歩譲って経営学はあとで何とでもなりますが、税法の科目を減らして、その分会社法を試験科目に入れたほうがいいと思っています。
現在、法人税・所得税の選択必修科目以外にあと2つ税法科目を受験する必要がありますが、そのうちの1つは消費税などを含めた「総合税法」という科目にして、残り1つを教養科目してほしいのです。
教養科目が無理ならば会社法を入れてほしいです。
会社法を知らないで中小企業の指導をするというのは間違っていると思います。
なぜなら、中小企業は会社法で動いているからです。
会社法を知らずに顧問をするのは難しいと思いますので、税理士を受けるならば、会社法は独学で頑張ってください。
さらに差別化するならば民法もやっていただきたいです。
公認会計士協会で新人の会計士の研修でもお話したことですが、民法はやったほうがいいです。
経営学もやっておくとコンサルがやりやすいです。
それから、受験勉強についてですが、税理士の場合はコツコツ1科目ずつ受験します。
だいたい1日2・3時間の勉強で4年から8年ぐらいです。
5年以上かかるケースが多いですし、なかにも10年という方もいらっしゃいます。
会計士の場合はまとめて受験するので、1日4時間から8時間を2年から4年なので、太く短く勉強するのが会計士です。
このあたりを踏まえて考えてみてください。
ちなみに、私がもう1回生まれ変わってどちらかを目指すならば、私はもう一度会計士を受験します。
そして、会計士に合格した後に税理士をやります。
これは好みです。
しかし、税金の計算は大事なので、税理士という仕事は絶対に必要ですし、現在税理士の資格は非常に重要だと思います。
国の財産のベースは税金なので、税理士の資格は意義があります。
中小企業を主なお客さんにするならば税理士で、大企業を相手に監査やコンサルティングをやるならば会計士です。
それと2つ目のご質問である「今後の方向性」についての回答です。
私からの回答としては、「ゴールから考えてみたら?」ということです。
これはマイケル・マスターソンという人が言っていた話で、「7年間で資産を1億作るには」という面白い話をする、財産形成系のメンターのような方ですが、その方の話の中で面白いのは、「人生の4つの領域について優先順位を決めましょう」ということです。
たとえば「財産」だったら資産を1億貯める、「健康」だったら高校の時の体重に戻す、「社会生活」ならば区長さんになる、市議会議員になる、町内会で一定の役職をやる、ボランティア活動をやるなどです。
個人の好みや価値観です。
「私生活」では、たとえばマイケル・マスターソンという方であれば「本を書きたい」や、「子どもの成長」など、いろいろあります。
「財産」「健康」「社会生活」「私生活」それぞれの面でどれが一番、7年後どうなっていたいかという少し先のことを考えて、自分はどういう姿になっていれば幸せかということを考えます。
いま挙げた4つの面でそれぞれあると思います。
それぞれについて書いてみて、どれが一番自分にとって最優先すべきかということを考えて、それに特化して7年間優先して時間と金をかけるという発想もあります。
これはシステマティックなやり方です。
もう1つの考え方としては、ずっと会社にいてもいいのですが、他の世界も見てみたいということでしたら、会社を辞めたからといってその社長さんや会社の人との関係が切れるわけではないのですから、そのあとも繋がりを持つようにして、「一度外の世界を見てみたい」と正直に行ってみればいいのです。
そして「また戻ってこられるのなら戻ってきてもいいですか」とダメ元で言ってみるのもいいのではないでしょうか。
実際に去年1度話しているのだから。
風通しの良い組織であるのならば、正直に言ってみたらどうでしょうか。
もし良い関係が築けているのならば「もし嫌になったら戻ってこい」位のことは言ってくれるかもしれません。
そのときに大事なことは何かというと、残るにしろ辞めるにしろ、今いる会社で頑張ってください。
たとえば今の会社で貢献をして利益を1億残すというようなことをやってみてください。
今の会社にあと2年3年といるわけですから、その2年3年で会社に大きな利益を残してください。
そして、会社に利益を残した状態で「今までありがとう」と言われた状態で次の道に進みましょう。
ポイントとしては、その会社に貢献をして惜しまれて辞めるのかどうかということです。
会社を辞めるときに「辞めていいよ」と言われて辞めるのは嫌ですよね。
だから、一度前の会社で辞めたときの辞め方というのは、次の会社でも繰り返すのです。
上司とけんかをして辞めた人は、次の職場でも上司とけんかして辞めるのです。
前の会社をセクハラで辞めた人は、次の職場でもセクハラで辞める可能性が高いのです。
歴史は繰り返します。
ということは、今の会社で続けるにせよ辞めるにせよ、今の会社にとってかけがえのない人材になることのほうが重要ではないでしょうか。
まずは今の会社に貢献した上で、信頼関係を築いて相談をしてください。
そして、マイケル・マスターソン的に言うならば、先ほどの4つの領域を自分で書き出した上で、優先順位を決めて選択肢を導き出してください。
「ゴールから考える」というのは、「7つの習慣」での第2の習慣の話でもあります。
このあたりを参考にしていただければいいと思います。
ぜひ頑張ってください。
私はあなたを応援しています。
最後にこの言葉を贈りたいと思います。
頑張ってください!
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。
PREV
サラリーマンか独立起業か?→機会原価と埋没原価の計算例【簿記1級】
|
NEXT
家計は経済に如かず、経済は政治に如かず【都知事決定(小池百合子氏)】
|