「収益」の意味を、柴山式総勘定元帳で考えてみよう!

基本的な話ですが、簿記2級や簿記1級やさらに上のレベルの勉強をされる方もあまり意識しない話です。
 
「収益って何?」って聞かれると意外と答えられないです。
これを柴山式総勘定元帳でバシッと答えてしまいます。
 
これは日商簿記検定1級や会計士や税理士の財務諸表論などで学ぶ収益の定義にも関係しますので、ぜひ知っておいてください。

事例はシンプルですが、意外に奥が深い話です。
収益とは何か、あるいは損益とは何かということにも繋がります。
では柴山式総勘定元帳の事例でいきます。
 
柴山式総勘定元帳は、十字を書きます。
左上が資産のグループで、現金や売掛金などが該当します。
 
右上が負債のグループで、買掛金や借入金などが該当しますが、今回は手付金の受け取りということで前受金という勘定科目を使います。
 
右の真ん中が純資産で、資本金などです。
右下が収益グループで、売上や受取手数料や受取利息などがあります。
 
左下は費用のグループで、仕入、給料、交通費、交際費、貸倒引当金繰入額などが該当します。
 
このような形でそれぞれのエリアに同じ種類の勘定科目を集めます。
今回は取引を3つ用意しましたが、それぞれの取引は以下の通りです。
 
①お客さんから商品100,000円の注文を受け、手付金として現金5,000円を受け取った。
注文を受けただけであれば資産の増加・減少もないし、負債の増加・減少もありません。
 
資産の増加・減少、または負債の増加・減少を伴うものを簿記上の取引といいます。
つまり、簿記の用語で資産や負債の増減を伴わないものは簿記上の取引とはならない、つまり記録の対象になりません。
 
従って、お客さんから100,000円の注文を受けただけでは資産も増えませんし負債も減りません。
これは簿記上の取引とはならないので、仕訳や転記はしません。
 
他に似たような事例では、従業員と雇用契約を結んだというものがありますが、これも取引と言えなくもないですが、会計の世界では取引とは言いません。
 
なぜなら、雇用契約だけでは資産・負債の増減がないからです。
お互いの合意事項という契約自体は簿記の世界では記録の対象になりません。
 
話が少し遠回りしましたが、手付金は受け取りました。
内金というケースもあります。
 
契約内容も若干変わりますが、内金や手付金というのは注文をした証としてお金を一部渡すものです。
 
今回は100,000円の5パーセントで5,000円だけ受け取りました。
これを手付金といいますが、前に受け取ったお金で前受金といいます。
 
この場合は現金という資産のプラスと負債のプラスの同時発生です。
現金は増えたけど借金も増えたということです。
 
お金を預かっただけでまだ儲かっていません。
なぜかというと、商品を渡す約束をしただけだからです。
 
前受金5,000は預かりましたが、後になって約束通りに商品を渡せなかったらお金は返金する可能性もあります。
従って、これはまだ儲かってないので負債です。
 
資産の増加と負債の増加の同時発生は、単なるバランスシート上の両建てです。
借金で資産が増えても何の取り分にもなりません。
 
返金する可能性がある以上、負債になります。
従って、儲かっていません。
 
ですから、損益に影響はないのです。
資産の増加と負債の増加の同時発生は儲けには影響しないということは大事なので覚えておいてください。
 
②(1)お客さんに商品を引き渡し、手付金(前受金)5,000円を代金の一部に充当した。
お客さんに商品を引き渡して義務を果たしましたので、借金が減ります。
 
まずは前受金という負債が減ります。
負債が減るということはお金を返さずに済んで良い気持ちです。
 
良かったことがあったので、収益です。
従って、売上になります。
 
100,000のうち5,000は前受金という負債の減少によって収益が発生します。
つまり、収益の会計的な意味は一方的な負債の減少です。
負債が減れば嬉しいです。
 
5,000円を返金する可能性がありましたが、返金の可能性がなくなって(負債がなくなって)嬉しいので売上という収益が立ちました。
 
売上の収益の元となったのは負債の減少です。
負債の減少を伴うものが収益です。
 
②(2)残代金95,000は現金で受け取った。
残代金は売掛金でも良いですが、今回は現金で受け取りました。
 
これによって現金という資産が増えました。
資産のプラスを伴う収益の発生です。
 
従って、現金のT字勘定の左側に95,000と書きます。
資産の一方的な増加を伴うようなものは収益です。
 
あるいは負債の一方的な減少を伴うものも収益です。
収益の会計的な意味は、資産の増加または負債の減少を伴う行為です。
 
資産が増えたら嬉しいですし、負債が減ったら嬉しいです。
ただ、資産の増加と負債の増加が同時にあったら嬉しくはありません。
嬉しいことがあった時に収益になります。
 
こういった形で、簿記3級の取引ですが、手付金のような前受金5,000という負債が減ったら嬉しいですから、これは売上の一部です。
 
あるいは現金という95,000の資産が増えた場合も収益です。
つまり、今回の売上100,000円というのは負債の減少5,000と資産の増加95,000の合わせ技ということです。
 
簿記の世界では、収益とは資産の増加または負債の減少を伴うような取引行為のことです。
反対に費用とは資産の減少または負債の増加を伴う取引行為です。
 
このように考えると簿記の理解が一歩進みますし、簿記・会計の知識を楽しく学べると思います。
ぜひ頑張って、興味を持って簿記の知識をレベルアップしてください。
 
私はいつもあなたの簿記検定の合格を心から応援しております。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

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