今回の「前を向いて歩こう」は、いつもとは毛色の違うお話です。
コンサルティングをしていると、従業員の給与の決め方について、変動給か固定給かという話や、基本給、諸手当、賞与の話題が出ることがあります。
特に中小企業のベテラン、新人、中堅社員、それぞれの立場でモチベーションを高める人事考課や報酬体系についての1つのヒントをお話したいと思います。
昔、私が上場企業で監査をしているときに思ったのですが、人事考課というのはバランスシートや損益計算書の側面で考えると面白いです。
バランスシートというのは過去からの蓄積(ストック)です。
例えば資産があって、負債があって、その差し引きである資本(純資産)があります。
資本金や利益剰余金というものがありますし、資産ならば在庫(棚卸資産)や売掛金や現金・預金、有価証券、設備などがあります。
そのような資産から借金を引くと、株主の取り分(純資産)となります。
これは過去のストックであり、年度が替わっても消えることがありません。
その一方で、損益計算書というのは売上や費用など、1年間でどれぐらい儲かったかというお金の流れを示すもので、これを「フロー」と言います。
年度が替わったらゼロからスタートします。
例えば去年の売上が90億ならば、新しい年度になったらまたゼロからスタートします。
今年の売上が100億だったとしても、去年の90億を足して190億ということにはなりません。
1年ごとに区切り、前期と比較します。
というふうに考えると、実は基本給というのは過去からの貢献の蓄積なので、バランスシートで考えるケースです。
勤続年数や会社の勤務年数といった年功序列的な部分で決まってくることが日本ではあってもいいと思います。
そうしないと、とりわけ突出した能力はないけれどもコツコツ地味に会社の縁の下の力持ちとして扱います。
昔で言うとジャイアンツの河相選手のように、派手なホームランは打たないけれども目立たない人が腐ってしまいます。
そのような人にもやる気を持ってもらうためには、過去からの蓄積で基本給の部分はある程度年功序列を取り入れるのも良いと思います。
私はこの発想は昔から大事だと思っていました。
目立たないけれども縁の下の力持ちとして頑張っている方も年数に応じて給料をアップしたほうが嬉しいのです。
これは社長の責任だったりします。
従って、基本給はバランスシート、過去からのストック、社員の過去からの貢献度に応じて、これは能力とはまた別の尺度で評価します。
その人がどれだけ会社のために身を粉にして働いたのかを見て、その「お礼」という形で給与を上げていきます。
これはお客さんが払ってくれる利益から出すものですが、大事な投資です。
今後も従業員に頑張ってもらうための投資として考えます。
もちろん、仕訳の上では「賃金」や「給与」といった費用になりますが、会社にとってはこれからも働いてもらうための投資、いわゆる社員投資です。
過去からの勤続年数や貢献度といった「会社のためにどれだけ働いたか」をみて、「これまで頑張ってくれてありがとう」という気持ちで少しずつ金額を増やしていくのが基本給(バランスシート)の考え方です。
それに対して成果報酬というのは賞与が一番です。
要するに、余った利益から出すということです。
ですから「儲からなかったら出さない」というのはあってもいいのです。
賞与というのは基本給と混同してはいけません。
こういった教育もできれば学校で行ってほしいと考えています。
社長によっては基本給と賞与をよく分かっていないことがあります。
本来、賞与というのは「利益処分」といって余った利益から出すものなので、賞与が出ないことがあってもしようがないのです。
「賞与を出したかったら(もらいたかったら)稼げよ」ということです。
今は基本給の部分まで変動給にしているので、社員がやる気をなくすのです。
結果が出ないのは社長の責任であって、従業員の責任ではありません。
基本給まで手をつけるのはあまり好ましくありません。
給料を下げてしまうと、結果的に従業員のやる気がなくなってしまいます。
給料を下げずに、コツコツ上げられるように頑張るのが社長です。
もちろん、リーマンショックのような自力ではどうすることもできないような要因で業績が下がった場合は、「一時的に下がるかもしれないけど、また上げるから」という形で、一時的に下げることもあります。
一時的に下がることはあるかもしれませんが、歳を取れば取るほど子供も大きくなって学費などのお金が掛かりますので、ある程度は上がるような基本給の仕組みを作ってあげるのが社長ではないかと思っています。
特に日本の会社は基本給が大事なのです。
基本給というのは「僕には特別な才能はないかもしれないけど、この会社のためにこれからも頑張ろう」と思ってもらえるモチベーションの源になり得るのです。
ですから、少しずつ上げてあげます。
差をつけるとしたら賞与で差をつけます。
手当はその人が任された役職や責任などのケースバイケースでつけます。
そして賞与は成果報酬で完全な変動給です。
この感覚で給与設定ができる社長さんがいる会社というのは幸せな会社だと思います。
例えば若手の部長とベテランの課長さんがいたら、基本給はベテランの課長さんのほうが高いけれども、手当は若手の部長が多いといったやり方でOKだと思います。
賞与に関しては、利益が上がったらその人の貢献度や優秀さに応じて支払います。
基本給まで成果報酬にしてしまうから地道に仕事をしている方が嫌になってしまうのです。
それは逆に会社の首を絞めることになります。
成果報酬が会社の首を絞めるパターンは、基本給にまで賞与の発想を入れてしまうときだと私は個人的に思っています。
基本給は「バランスシート」、手当と賞与は「損益計算書」と考えてください。
特に賞与は利益が余ったら出すというイメージで、この3段階の使い分けをしてみてください。
シンプルですが中小企業では効果的ですので、社会保険労務士の先生や私などに相談をしてみてください。
従業員のやる気がお客様の満足に繋がります。
従業員が幸せではない会社はお客様も幸せにできません。
ですから、社長さんはまず従業員を幸せにしましょう。
参考になれば幸いです。
私はいつもあなたの成功・スキルアップを心から応援しております。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。
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