今回の「がんばろう日商簿記1級合格」は、今さら聞けない原価の本質についてお話をします。
「費用」や「原価」という言葉はよく聞きますが、改めて「原価と費用は何が違うのか?」と聞かれると意外と答えに困ることがあります。
そこで、費用と原価の関係について理論的なお話をします。
これを日商簿記検定でしっかり意識するのは簿記1級だと思います。
簿記2級でもどこかで触れるかもしれませんが、あまり意識することはありません。
あえて言うならば、簿記1級の理論でこの話をすることもありますが、ここをきちんと知らなくても合否にはあまり影響ありません。
しかし、実務上では役に立つため、教養として知っておいていただきたいと思います。
まず、原価については原価計算基準というルールがあるのですが、これを本格的に意識して勉強するのは公認会計士の管理会計です。
簿記1級ではその導入部分を勉強しますが、本格的にやるのは公認会計士試験です。
公認会計士試験の勉強を本格的にやった方であればこういったことは暗記しているはずですし、私も暗記しました。
原価計算基準の三では、「原価とは何か」ということについて詳しく書いてありますが、それを簡単に箇条書きにしてみました。
以下の4つの条件を満たすものを原価と言われています。
これを知っておくと実務上役に立つかもしれませんので、知っておいてください。
ここは会計の専門家と呼ばれるような方々もこのあたりは突っ込んで学習していません。
学者や本格的に会計士試験を受けた方はやりますが、税理士試験には本格的な原価計算はないので、製造業の税務が得意ではない税理士さんも多いので、差別化という意味で原価について少し知っておくと良いです。
経理の現場でも議論の対象になりますし、私が上場企業の監査をやっていたときには製造業が多かったので、この話はしたことがあります。
この4つ要件を満たさないものは損益計算書上の製造原価・売上原価・販売費及び一般管理費に入りません。
1.経済価値(物品やサービス)の消費
2.給付(製品など)に転嫁される価値
3.経営目的(生産・販売)に関連したもの
4.正常なもの
1についてですが、これは当たり前のことで、自分で何かを消費するということです。
2についてですが、製品以外にもお仕掛品や半製品などの在庫関係のものも含みます。
製品を作るまでにかかった材料費や労務費は製品の費用に転嫁されます。
3つ目も当たり前のことで、会社の本業に関係するものです。
気歩的な会社の営業目的は物を作って売ること(あるいは物を買ってきて売ること)です。
生産または販売のどちらかに関連したものが原価と呼ばれます。
4つ目の「正常なもの」というのは、毎年起こりうる適正な金額ということです。
例えば災害や突発事項などの異常な原因で発生したものは正常ではないので、原価とはなりません。
こういったものによって集計されたものを「総原価」といいます。
総原価には2つあって、意外に思うかもしれませんが、販売費や一般管理費などの営業費も原価計算基準では原価と呼ばれます。
販管費や一般管理費は原価から外すかもしれませんが、みなさんがイメージしている原価というのは狭い意味の原価なのです。
いずれ売上原価を構成する製造原価、つまり材料費・労務費・経費が原価というイメージを持たれている方が多いですが、実は営業コストも原価と考えます。
ただし、日商簿記検定1級や2級の工業簿記・原価計算のメインテーマの95パーセントは製造原価になります。
簿記1級で営業費を扱いますし、簿記2級でも損益分岐点分析のときに若干営業費が関係しますが、全体の割合としては5パーセント程度と少ないです。
学習する割合は少ないですが、製造原価だけが原価ではないということを知っておきましょう。
以上の4つの要件を踏まえて損益計算書の表示例を見てみると面白いです。
売上高が1,000だとして、売上原価は600で、売上総利益は400になります。
売上原価600というのが製造原価を構成します。
お客さんに提供された棚卸資産の原価が売上原価で、お客さんに提供する棚卸資産の売価が売上高なので、提供した商品の売価と原価の関係ですから、1対1の個別対応をします。
これを個別的対応または直接対応と呼びます。
売上高から売上原価を差し引いたものが売上総利益(粗利益)です。
多くの方の原価のイメージはここまでだと思うかもしれませんが、販売費及び一般管理費も原価計算基準では原価に含まれます。
そして、ここまでの原価を引くと営業利益という本業の儲けが出ます。
原価より少し広い概念で費用というものがあります。
これは純資産を減らす要因です。
非原価項目と呼ばれているもので、例えば支払利息や有価償却売却損などの営業外費用がこれに当たります。
逆に、受取利息や有価証券売却益といった営業外収益というものもあります。
これらは本業に関係のない財務活動の収支で、非原価項目と呼ばれます。
売上高から総原価を引くと営業利益になるということを知っておきましょう。
これまで原価という言葉について漠然としたイメージを持っていた方が多いと思いますし、原価と費用の関係を考える機会というのはなかなかないと思いますが、簿記の勉強を少しシャープにするための参考知識をご紹介しました。
簿記を楽しんで学んでください。
私はいつもあなたの日商簿記検定2級・1級の合格を心から応援しております。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。
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