固定予算(2級工業簿記)

「固定予算」について説明します。
固定予算は、「変動予算」とよく比較されることがありますが、両者には重要な違いがあります。
変動予算は「公式法変動予算」とも呼ばれ、製造間接費の管理方法として広く利用されています。
特に工業簿記の分野では、操業度(稼働時間)の増減にかかわらず予算額が一定であることが特徴です。

予算とは、将来の一定期間における事業計画の財務面を示すもので、通常1年単位で策定されます。
これは「短期利益計画」とも呼ばれ、経営計画の一環として財務の見通しを立てるために使用されます。
予算管理において、製造間接費を「変動費」と「固定費」に分けて管理する方法がありますが、固定予算ではすべての費用を固定費として扱います。
これが「公式法変動予算」との主な違いで、公式法変動予算では費用を変動費と固定費に分けて管理しますが、固定予算ではすべてを固定費として計上し、シンプルな方法を採ります。

例えば、製造間接費が年間11,400,000円で、年間の基準操業度が6,000時間の工場の場合、月間予算額は11,400,000円 ÷ 12ヶ月で950,000円となります。
また、月間操業度は6,000時間 ÷ 12ヶ月で500時間となります。
固定予算制度では、操業度が増減しても予算額は変わらず、例えば500時間作業した月も450時間作業した月も、予算額は常に950,000円で固定されます。
この場合、1時間あたりの予算額は950,000円 ÷ 500時間で1,900円となります。

このように、固定予算では操業度の変動にかかわらず予算額が一定であり、管理が非常にシンプルです。
しかし、実際には水道光熱費や間接材料費など、消費量に応じて変動する費用があるため、固定費と変動費を分けて管理する方が、より現実的な予算管理が可能な場合もあります。
それでも、固定予算ではすべてを固定費として一律に扱うため、管理が簡便であるという利点があります。

固定予算は、変動予算と比較して柔軟性に欠ける部分がありますが、操業度の変動に影響されない安定した予算管理を実現できます。
このシンプルな管理方法は、企業の規模や運営状況に応じて適切に選択されるべきです。

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