固定資産とは、「企業が長期間、使用する資産」のことです。
具体的には、
●建物、機械装置、備品、車両、土地など、形のあるもの・・・有形固定資産
●商標権、特許権、電話加入権、ソフトウェア、のれんなど、形のないもの・・・無形固定資産
●長期貸付金、投資有価証券、敷金保証金など、投資目的で保有しているものその他・・・投資その他の資産
以上があります。
バランスシート
―――――――――――――――――――
(流動資産) |
現金預金 |
: |
(固定資産) |
有形固定資産 |
建物 |
構築物 |
: |
無形固定資産 |
○○権 |
: |
投資その他 |
: |
このように、固定資産として表示されているものは、総じて、現金として全額が資金回収されるまでは、何年もかかります。
かんたんにいうと、
「事業活動を通じて、今後数年~数十年かけて、じっくりと投下資本(投資額)をキャッシュで回収することを予定する資産」なのが、固定資産というわけですね。
たとえば、ある事業を始めるに当って、5000万円を資金投下して、建物3000万円、土地2000万円を購入したとしましょう。
バランスシート1
―――――――――――――――――
現金預金5000|資本金 5000
|
―――――――――――――――――
計 5000| 計 5000
=================
バランスシート2
―――――――――――――――――
現金預金 0|資本金 5000
|
建 物3000|
土 地2000|
―――――――――――――――――
計 5000| 計 5000
=================
建物の耐用年数が20年、残存価額(寿命が来た時の処分価値)が0円としましょう。
20年間で、毎年200万円ずつの税引き後利益を獲得したとすると、200万円×20年=4000万円のキャッシュ・イン・フローになります。
その間、まったく配当がなかったとして、建物が20年後に価値が0円となり、その代わりに20年間で現金預金が上記の計算どおりに増えたとします。
バランスシート3
―――――――――――――――――
現金預金4000|資本金 5000
|
建 物 0|
土 地2000|利 益 1000
―――――――――――――――――
計 6000| 計 6000
=================
このように、20年間で、正味の現金収入4000万円?建物の減価償却3000万円=1000万円の利益(現金増加分)が手に入りました。
さらに、事業終了とともに、土地2000万円も、取得時と同じ金額で売却処分できたとしましょう。
バランスシート4
―――――――――――――――――
現金預金6000|資本金 5000
|
建 物 0|
土 地 0|利 益 1000
―――――――――――――――――
計 6000| 計 6000
=================
けっきょく、バランスシート2の時点と較べて、「建物3000万円、土地2000万円に投下した現金5000万円」は、20年間かけて、「6000万円のキャッシュとして回収」できた、ということができますよね。
このように、固定資産への投資は、長い期間をかけて、「それ以上のキャッシュフローが得られる」と思うからこそ意味をなすわけです。
ここで、もしも、「最初の10年間は、毎年200万円のキャッシュを予定通り獲得できていたが、11年目以降は、事業の経済環境の急激な悪化が予想される。」
「よって、11年目から20年目までは、毎年50万円ずつしかキャッシュが入らなくなり、なおかつ20年目の土地の売却時価が2000万円ではなく800万円まで値下がりすると予想された」としましょう。
■10年後のバランスシート
バランスシート5
―――――――――――――――――
現金預金2000|資本金 5000
|
建 物1500|
土 地2000|利 益 500
―――――――――――――――――
計 6000| 計 6000
=================
※現金預金2000万円=200万円×10年
建物1500万円=3000万円?10年×(3000万円/20年)
上記の固定資産の帳簿価額(帳簿上の評価額)を見ると、建物1500万円+土地2000万円=3500万円ですね。
ここで、11年目以降の、予想されるキャッシュフローは、
毎年50万円×10年= 500万円
20年目の土地売却額= 800万円
―――――
合計 1300万円
=====
帳簿価額3500万円よりも、将来見込まれるキャッシュフローの額の方が低いですよね。
このような状況を、「減損の兆候がある」といいます。
キャッシュの回収が、帳簿価額よりも下回るのだから、「減損損失(臨時的な評価額の切り下げによる損失)を計上しなければならない」とされるのが、減損会計なのです。
そして、実際にどれだけの損失額を計上するか、といえば、「回収可能額と帳簿価額の差額」とされています。
では、ここでの回収可能額を、
「売却時価:建物650万円+土地900万円=1450万円」
であるとしましょう。
10年後の決算時点では、建物の帳簿価額が1500万円、土地の帳簿価額が2000万円ですから、
建物の減損損失:1500万円-650万円= 850万円
土地の減損損失:2000万円-900万円=1100万円
となり、損益計算書(特別損失の区分)には、合計で1950万円もの減損損失が計上され、利益が減少することになります。
■10年後のバランスシート
バランスシート5
―――――――――――――――――
現金預金2000|資本金 5000
|
建 物1500|
土 地2000|利 益 500
―――――――――――――――――
計 6000| 計 6000
=================
■減損後のバランスシート等
バランスシート6
―――――――――――――――――
現金預金2000|資本金 5000
|
建 物 650|
土 地 900|利 益▲1450←←・
――――――――――――――――― ↑
計 3550| 計 3550 ↑
================= ↑
↑
損益計算書 ↑
――――――――――― ↑
売 上 高 ××× ↑
: : ↑
特別損失 ↑
減損損失 1950(?)→→・
: :
以上のように、ある時点で、固定資産の収益性の低下が予想される場合には、減損損失を計上しなければならない、というのが減損会計の趣旨なのですね。
日本トイザらスが6日に発表した2007年7月期(中間)の単独決算は、19億5700万円もの最終赤字だとのことです。
前年同期は12億円の赤字でした。
従来予想は14億円の赤字だったので、予想よりも5億円ほど赤字が増えたことになりますね。
その理由の主なものとしては、営業不振の三店舗の資産に関する減損損失4億2900万円を特別損失に計上したことがあげられます。
ちなみに、このときの営業損失が18億8800万円、経常赤字は18億1500万円と、厳しい状況に変わりはなさそうです。
ただし、年末商戦で売上が大幅にアップするため、通期での予想に変更はなく、最終損益は10億円の黒字を見込んでいるようです。
今後の業績の動向に注目ですね。
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