「研究開発費等に係る会計基準」という会計ルールが、今から7年前の平成11年4月以降に施行されました。
いわずとしれた「会計ビッグバン」の一環で新設された会計基準の一つです。
※なお、会計ビッグバンは、1996年、橋本内閣のときに提唱され、1999年から順次導入された一連の会計制度改革のことです。
それまでは、外国人投資家から日本の会計制度が不透明である、との批判を受けてきましたが、バブル崩壊から日本経済を立ち直らせるためにも、必要とされてきた制度の変革と言えます。
この中で有名な会計基準としては、税効果会計、金融商品会計、退職給付会計、減損会計などがありますね。
ここで、研究開発費の意味について、みていきましょう。
研究開発費は、「研究」及び「開発」のために支出した費用です。
ここで、「研究」と「開発」という行為について、会計基準は、明確な定義を示しています。
「研究」…新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探求。
「開発」…下記のいずれかの目的のために、研究の成果その他の知識を「具体化」すること。
1 新しい製品・サービス・生産方法についての計画または設計
あるいは
2 既存の製品・サービス・生産方法を著しく改良するための計画または設計
かんたんにいえば、「研究」は、新しい知識を発見するための調査・探求であり、「開発」は、新製品や既存製品改良のための知識の具体化である、ということですね。
このような研究・開発と言う活動が重要性を増すのは、主として技術革新が競争戦略上欠かせない、製造業においてでしょうね。
バイオテクノロジー、半導体や電気機器、医薬品などは、まさに先端技術の開発を競っているでしょうから、研究開発コストにどれだけ経営資源を振り向けるかは、死活問題といえます。
もちろん、IT業界でも、研究・開発の重要性は高いはずです。
この研究開発費は、とくに「企業間比較」という観点から、将来の競争力を判断するために、ステークホルダー(利害関係者)としては、注目しておきたい情報です。
会社四季報などを見ても、「研究開発費ランキング」というデータがあったりします。
このように、研究開発費は、「どの会社が他社と比べて将来のための研究活動に熱心か」を判断する指標としての重要性が高いので、会計処理も、企業ごとに処理方法が異ならないように、統一されています。
具体的には、「研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければならない。」とされています。
たとえば、一般の事業目的で取得した機械装置は、固定資産としてバランスシートに登録し、その後、減価償却という特別な会計処理を通じて、数期間に費用配分されます。
しかし、研究開発目的にのみ使用される機械装置は、「固定資産」として扱うことは許されず、すべて取得した期の費用とするのです。
こうしてみると、「研究開発費」の扱いは、発生時費用処理ということで、かなり徹底されています。
それぐらい、「その年の研究開発費用の企業間比較は大事!」と考えられているのですね。
なお、費用処理された研究開発費は、損益計算書(P/L)において、「売上原価」または「販売費及び一般管理費」の区分に含まれます。
損益計算書
―――――――――――――――――
1売 上 高 ×××
☆⇒ 2売 上 原 価 ×××(?)
―――
売上総利益 ×××
☆⇒ 3販売費及び一般管理費 ×××(?)
―――
営業利益 ×××
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研究開発費は、上場企業の決算短信や有価証券報告書などでは、注記事項としても開示されています。
以上、企業の将来性を占う上で重要な研究開発費用のお話でした。
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