販売奨励金とは、委託販売を行っている場合に、自社の商品を代わりに売ってくれる販売代理店に対して、販売促進のために支払う手数料のことです。
一般には、「販売手数料」や「販売促進費」などとも呼ばれている費用ですね。
自社だけで商品を売ろうとするよりも、代理店を募って、その代理店の人脈と販売チャンネルとかを利用して、売上を拡大する方が、営業戦略上、有利なケースが多いです。
このような場合、代理店がヤル気を出すように、できるだけ奮発して手数料を出してあげるのがミソです。
たとえば、かつては「1円端末」が携帯ショップの店頭にならんだりして、「そんなんで儲かるの?」という疑問をもたれた方も多いと思います。
もちろん、携帯ショップ(代理店)は、1円で携帯を売っても、もうかるはずはないですよね。
(説例1)1円で携帯を1万台販売したショップのP/L
このときの携帯端末の原価を、1台3万円とする。
損益計算書
―――――――――――――――――
売上高 1万円
売上原価 △30000万円 (3億円)
―――――――
売上総利益 △29999万円
: :
このように見ていくと、売上総利益(粗利)が、現時点ではなんとマイナス3億円近くとなっているため、このままでは商売が成り立つはずもありません。
そこで、基本契約にもとづいて、販売奨励金を携帯端末の販売元請会社であるNTTドコモなどから、1台4万円の金額で受取ったとしましょう。
(説例2)1円で携帯を1万台販売したショップのP/L
このときの携帯端末の原価を、1台3万円とする。
さらに、1台あたりの販売奨励金を4万円ずつ受取っていたとする。
損益計算書
―――――――――――――――――
売上高 40001万円
売上原価 △30000万円 (3億円)
―――――――
売上総利益 10001万円 (1億1万円)
: :
いかがですか?
売上高のほとんどすべてが「販売奨励金」という、すさまじい状態ですね。これで、1億円強の利益を得ることが
できました。
さて、ここで一方の販売元会社(代理店に販売を委託した会社)は、どのようなP/Lになるのでしょうか。
(説例3)販売代理店に、1万台の携帯端末(原価2万円)を
1台3万円で販売し、それと並行して、
1台4万円の販売奨励金を支払った。
損益計算書
―――――――――――――――――
1売上高 30000万円 (販売高)
2売上原価 △20000万円 (仕入原価)
―――――――
売上総利益 10000万円 (1億円)
3販売費及び △40000万円 (4億円)
一般管理費
―――――――
営業利益 △30000万円 (3億円)
: :
うーむ。これでは、売れば売るほど、販売元の会社は、赤字を増やしてしまいます。
これでは、営業を継続できませんね。
しかし!
もちろんこれには、からくりがあります。
この販売元会社は、携帯販売後、通信料を毎月、徴収できるのです。
(説例4)販売代理店に、1万台の携帯端末(原価2万円)を
1台3万円で販売し、それと並行して、
1台4万円の販売奨励金を支払った。
その後、一年間で、通信サービス料の売上を、20億円
消費者から徴収した。
損益計算書
―――――――――――――――――
1売上高 230000万円 (販売高+通信料)
2売上原価 △20000万円 (仕入原価)
―――――――
売上総利益 210000万円 (1億円)
3販売費及び △40000万円 (4億円)
一般管理費
―――――――
営業利益 170000万円 (17億円)
: :
…と、このように、「機器販売(携帯端末販売)による売上3億円」をはるかに上回る「通信料収入20億円」があるために、機器販売で損をしても、トータルで大きな利益を手にすることができるのですね。
「損して得取れ」をまさに地で行っているようなビジネスモデルといえるでしょう。
ちなみに、販売奨励金(販売手数料、販売促進費)は、一般事業会社では「販売費及び一般管理費」で処理・表示しますが、NTTドコモの財務諸表を見ると、「営業費用」という名称で、売上原価と一本化しているように見受けられます。
ご参考になれば幸いです。
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