日産自動車の業績回復が、不透明な状態となってきています。
日経2007年7月21日の15面では、
「24日に発表する2008年3月期 第1四半期(4~6月)の 連結業績は、営業段階でも減益になる公算が大きい。」
と報じられています。
これに関連して、4月に年初来の安値をつけてから回復基調だった株価も、また上値が重くなっていているようです。
また、三菱UFJ証券など6社のアナリストの予想を平均すると、日産の4~6月の営業利益は1478億円と、前年同期比4%減の見込みです。
ちなみに、2007年3月期の年間営業利益は7769億円ですから、第2四半期以降、かなりの増収がないと、前年度波の水準を維持するのも、難しくなりそうですね。
さて、ここで基礎知識の確認です。
損益計算書のフォーム(一部)を再確認しておきましょう。
損 益 計 算 書
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売 上 高 1000
売 上 原 価 640(?)
――――
売上総利益 360
販売費及び一般管理費 300(?)
――――
営業利益 60
: :
上記を見ると、営業利益がどれくらいになるかを
決定付ける要因は、大きく3つあります。
一年間における販売高。入金額ではなく、商品・サービスの提供高。
輸出企業の場合、市場の需要や競争の程度に加え、為替レートの変動も、業績を左右する要因となる。
具体的には、円安(1ドルあたりの円が増える)になると、売上高が増加する。
(例:1ドル110円で10ドル販売=1100円。1ドル120円で10ドル販売=1200円。)
上記の販売高に対応する仕入原価。
製造業の場合は、上記の販売高に対応する製品の製造にかかったコスト。
具体的には、材料費+労務費+経費で求められるので、「原価の3要素」とも呼ばれる。
原材料を海外から輸入している場合は、円安になると、調達コストが上昇する。
最近では、日産のリバイバルプランのように部品の調達先を減らして集中化し、一箇所からの大量仕入による単価削減がトレンドとなっている。
年間で消費した販売活動の経費と管理活動(本社)の経費の合計
一番大きいのは人件費で、減価償却費、広告宣伝費、発送費なども、十分な管理が必要となる。
インフレ経済下では、特に慎重に管理しなければならない。
以上、3つの財務諸表項目の要素が複雑に絡み合って、営業利益という数字が作りこまれていくのです。
だから、経営管理者の視点では、どの要因が一番の問題点か、優先順位からいって、どこから先に改善に着手すべきか、など、迅速かつ的確な意思決定と指示・行動が必要になります。
さて、今回の日産自動車については、営業減益要因として、以下の点が上げられています。
●北米でトラック系車種の販売が低迷している。 …売上高要因
●国内の販売不振が続いている。 …売上高要因
●為替相場は、当初の117円の想定値よりも5円ほど円安となるので、この点では増収効果が見込まれる。 …売上高要因
●しかし、4?6月期は輸出自体が大きく減っている。 …売上高要因
●新潟中越沖地震で操業停止がコストに影響するか? …売上原価要因
●新車効果で下期は増益に転じるか? …売上高要因
いちおう、売上高要因と売上原価要因が、多く思い浮かびましたので、上記のようにピックアップしてみました。
ご自身でも、ブレーンストーミングのつもりで、ほかに原因が挙げられないか、ぜひ考えてみてください。
営業利益を構成する要因を日ごろから考え、文章で表現できるようなトレーニングは、非常に効果的ですよ。
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