先日の新潟における地震では、多くの方がご苦労されたことと思います。
さて、災害による会社の操業停止という事態は、経営上のリスクとして、常に頭の片隅に入れておかなければなりません。
特に、日本の場合は、
●台風
●地震
は、風土的特徴からいっても、いざという時のために、備えられるものなら、可能な範囲で備えておきたいですね。
2007年7月20日の9面「企業総合面」では、「復旧力問われる『カンバン』」というタイトルで、自動車部品大手リケンの操業停止を受けて、自動車メーカー全12社が順次生産を休止し始めた、という、ある意味衝撃的な記事が掲載されていました。
ちなみに、自動車の製造に必要な部品の点数は、約3万点だそうです。
このように、あまりに莫大な「材料」を必要とするメーカーの立場としては、いかにこの材料の在庫を削減するか、という問題は、事業継続の死活問題ともなりうるものですね。
参考までに、材料は、消費されれば「仕掛品(未完成時)」または「製品(完成時)」として、バランスシート上、在庫扱いで計上されます。
バランスシート
―――――――――――――――――――――
(流動資産) |
現金預金 ×××|
売 掛 金 ×××|
製 品 C | →→→→→→→→→・
材 料 A | ↓
仕 掛 品 B | ↓
: : | ↓
↓
↓
そして、製品(C)が倉庫から出荷され、 ↓
お客様の手元に届けられると、販売された ↓
(証拠から消えた=消費された)として、 ↓
「売上原価」という損益計算上の項目として、 ↓
計上されます。 ↓
↓
損益計算書 ↓
――――――――――――――― ↓
売 上 高 ××× ↓
売 上 原 価 C ←←←・
このように、部品は、特に自動車会社の場合、売上原価のかなりの部分を占めると思います。
たとえば、日産自動車の決算書を見ると、費用のおおむね80%が、なんと材料費で占められていました。
さて、このような売上原価の大部分を占める材料費は、個々の細かいレベルで少しずつ単価が高まっても、あまりピンと来ないかもしれませんが、1台あたり3万点もの材料を使うのですから、極端な話、3万点の部品がすべて1円ずつ値上がりしたとすると、1台の自動車を作るためのコストが、3万円ずつ上昇することになります。
また、もしも部品の仕入政策がうまくいかずに、使わない部品ばかり何万点も抱え込むことになったら…
これらは、非常に怖いことで、だから、部品を少しでも無駄にしないよう、カンバン方式をはじめとした、優れた在庫管理手法が日本でたくさん生み出されてきたわけなのです。
また、大手ともなればたくさんの部品を必要とするわけですから、多くの業者から少しずつ買うよりは、少ない業者からたくさん買った方が、割戻しを受けることができるので、部品単価が大幅に下がり、コストダウンにつながりますよね。
このように、
●工場内に余計な在庫を持たない
●部品の仕入先を少数に絞る
という政策は、コストダウン、キャッシュ節約の観点からは、非常に有効な手段と言えます。
しかし、ひとたび災害などがおき、一極集中していた仕入先の部品メーカーが操業停止になった場合などは、一気に、「無在庫・少数仕入先」政策が危機にさらされます。
●自社の工場が健全であっても、ほしい部品が届かない…
監査の立場から言えば、仕入先の絞込みは、その少数の仕入先の経営不振や関係悪化などによる供給不足によるダメージの有無を、予備調査の段階で、いちおう経営環境のリスクとして見たりすることがあります。
在庫削減・仕入単価削減のための業者絞込みには、光と影の部分があるのだ、ということを教えてくれたのが、今回の地震に係る操業停止の記事でした。
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