それと、これは別の機会でもお話をしますが、いくら専門学校といえども教育機関なので、教育心理学は必須だと思うのです。
「簿記ができるから」という理由だけで安易に講師にしてしまうと、教わる側の気持ちやモチベーションアップという面でのフォローができないのです。
簿記はプロなのかもしれないけれど、教育という意味ではど素人がやってしまうと悲劇になってしまいます。
昔あった本当の話ですが、わからないことを質問しに行ったら、平然と「君がなぜそこがわからないのか僕はわからない」と、生徒が二度と勉強をしたくなくなるようなことを平気で言ってしまうような先生もいました。
対応の仕方がまったく出来ていないのです。
ギリギリのところで発奮させて成長させる方法もたしかにありますが、自分のストレスをぶつけるような解答の仕方は、生徒を傷つけてしまいます。
この話はまた別の機会に詳しくお話しますが、色々な先生の指導を間近で拝見していて、残念ながら質問の答え方があまり上手ではない先生もいらっしゃいました。
「『なぜこの生徒がわかってないのか』ということ自体をわかっていないな」と思うような場面もありました。
私は「講師の講師」ではないので、教えることはできないのですが、講師の養成機関というのはあったほうが良いと思っています。
そうしないと、簿記の教育レベルは上がらないような気がします。
簿記に関して持論や提言をするような講師はたくさんいますが、簿記や会計について本当にきちんと教えているかというと、疑問が残ります。
話が脱線してしまったので、この話はこのあたりで終わらせて、今回のテーマについてお話をします。
何だかんだ言って、疑問があった場合は、最終的に自力で解決するのが一番いいのです。
自分で答えを発見するとその知識が身に付くのです。
ですので、できるだけ自分で理解できるようなヒントをお話します。
これは私が受験生時代から気付いていたことで、講師になったら使おうと思っていたことなのです。
「簿記とは何か」というと、会社で発生した何らかの取引があって、たとえば、現金を受け取った・借りた、銀行に現金を預け入れたら貸方は現金で借方は当座預金、商品を売ったら借方は売掛金で貸方が売上といったものです。
このような取引というのは人間がやるものなので、必ず意図があります。
その取引が何をしているのかということを理解した上で記帳しているかどうかなのですが、取引の理解を勘違いしていることが多いのです。
勘違いをするくらいなら、むしろわからないほうがマシです。
私はよく「わかったつもりで先に行きましょう」と言っていますが、これは、何度も繰り返して学習しているうちに徐々にわかってくるという意味で使っています。
何がわからないかを意識した上で先に進むのはいいのですが、「何がわからないかがわからない」ということが問題なのです。
「取引そのものを理解していないのか」それとも「取引の内容はわかっているが、記帳方法がわからないのか」を区別できずに、混乱してしまっている方もいます。
なので、あなたがある単元でわからない部分があったら、何がわからないのかを分析するだけでも力の付き方がかなり変わってきます。
そして応用力もつきます。
自分が何がわかっていないのかをわかっていないと、たとえば、過去問の問題文を見ていて、少しでもわからない部分があると全体がわからなくなってしまうように、自分を過小評価してしまうケースが多いのです。
自虐的になる必要はないのです。
最初の段階でわからない部分が出てきてしまうから、全てがわからないように思ってしまいますが、そんなことはありません。
どこでつまずいたかのセルフチェックをしてみてください。
私はこれを意識して生徒からの質問に対応しています。
「もう一度ご自身で、どこがわからないのかを確認しましょう」という話をすることがあります。
セルフチェックして欲しい項目の1番目は、「誰と誰が取引の当事者かということがわかっているか」です。
不動産流動化などは、誰が当事者なのかをわかっていないケースが多いです。
連結だったら、親会社と子会社が当事者です。
このように、まず、誰と誰が当事者なのかを正確に把握しましょう。
2番目は、「それぞれの登場人物が何を目的にこの取引に入ったのかを知っているかどうか」です。
「なぜこんな取引をするのかがわからない」という受験生が結構多いのです。
たとえば「なぜ不動産流動化をするのか?」「不動産を譲渡するとどんなメリットがあるのか?」「投資家にはどんなメリットがあるのか?」といったことを、それぞれの立場に立って考えるのです。
目的がわからないのならば、今はインターネットでも検索して調べることができます。
3番目は、「その目的を達成するために、当事者が何をしたのかがわかっているか」です。
主体・目的・行為がわかってくると、かなり取引が理解できます。
これで1級レベルでも自力でいけるのです。
「誰と誰が」「何を求めて」「どんな取引をしたか」のうち、どこがわからないのかを意識した上で質問をするのは良いのですが、「何となくわからないから全部教えて欲しい」というのは最悪の質問パターンです。
4番目は、「その行為の結果、どのような影響があったかがわかるか」です。
この、影響の部分を仕訳するのです。
この影響が資産・負債の増加・減少に関係する場合を「簿記上の取引」というのです。
資産・負債の増加・減少が無い場合は簿記上の取引では無いので、仕訳する必要がありません。
なので、4番目は大事です。
何の資産が増えたのか?あるいは減ったのか?何の負債が増えたのか?あるいは減ったのか?ということを最後に仕訳で表現します。
さらに5番目に、「どう表現したか」というものもあって、これには2つあります。
ここは細かくて、点数に直結するのもこの部分です。
計算というのは下書きのことです。
集計・整理・計算
下準備(計算)をしてから記帳します。
記帳には分記法、総記法、割賦販売の場合だと未実現利益整理法など、書き方の問題と集計の仕方の問題があります。
特に日商検定1級で面倒なのは、4番目の「影響の把握」と、5番目の計算です。
この部分で多くの方が悩むのです。
この5つに分けて、自分がどのステップでわからなくなっているのかを意識してみてください。
漠然とわからない状況と違って、わからない部分をピンポイントで指摘できるようになると、気が楽になります。
簿記1級が嫌いにならなくなるのです。
そして、それがわかった上で質問をすると、講師も質問に答えやすくなります。
生徒と講師のコミュニケーションを密にすることにも繋がりますし、生徒自身がわからない部分の本質を理解するという意味でも、とても役に立つ方法だと思います。
何千人の生徒と対峙していて、この方法が一番シンプルだと感じています。
これを拠り所にして、質問や、セルフチェックをしてみてください。
こういったノウハウをこれからも紹介していきたいと思うので、よろしくお願いいたします。
私はいつもあなたの1級合格を心から応援しています。
ここまでご視聴いただき誠にありがとうございました。
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