過去14・5回分の問題を見ても、連結などの他の大きな論点は出るのですが、本支店会計は出ていないのです。
みなさん無防備なので、出題されたときに怖いです。
本支店会計を苦手にしている人はとても多いのですが、連結会計にも繋がる論点なので、やっておいていただきたいです。
先日は2級で本支店会計が出ましたが、柴山式では本支店会計が出題されると予想していたので、合格された受講生が多かったです。
1級でも、そろそろ本支店会計が出そうなのですが、全くやってない方が多いので、出題された時に怖いのです。
平成26年の第2回CPAの短答式第二問で本支店会計が出ているのですが、今回はこれの類題を使って、「もしも1級で本支店会計が出たならば」というお話をしたいと思います。
これは会計士レベルの試験ですが、1級で出題されてもおかしくない内容を作ってみました。
これまでは、本支店の合併貸借対照表または合併損益計算書を作らせる問題か、本店の損益勘定を書かせる問題がよく出ました。
これに関しては、柴山式の商業簿記・会計学のテキストの中に例題がありますので、これを完璧にしていただければほぼ問題ありません。
そして、105回の試験では、海外支店の円換算が出たこともあります。
これに関しては、かなり前の過去問なので、明日か明後日に配信する解説動画をご覧ください。
そして、出る確率は低いですが、万が一出題されたらほぼできないと思うのが、支店が2つあるケースです。
これは1級レベルで出題されてもおかしくないのですが、今までほとんど出ていません。
たしか134回で、連結で子会社が2つあるケースが出題されました。
出題する側も、傾向を少しずつ変えてきているのですが、では、本支店会計が出すときに新しい論点を入れるとしたら、在外支店の円換算を入れるか、支店が2つのケースを出すことが考えられます。
支店が2つのケースは、10分ぐらいで解答できる問題を作れるので、会計学で出題されてもおかしくありません。
公認会計士や税理士試験対策にもなるので、将来、それらの試験を受ける予定のある方は、この点を今回チェックしていただきたいと思います。
今回お話する内容はレアなケースですが、万が一出題されたときにショックを受けないように、ぜひ確認をしておいてください。
2つのポイントさえしっかりと理解しておけば大丈夫です。
それでは見ていきましょう。
日商検定2級では、支店間取引について、「本店集中計算制度」と「支店独立計算制度」の仕訳を勉強しています。
しかし、それを決算に反映させる場合にはまた違うテクニックが必要になりますので、事例を使ってお話をしたいと思います。
問題文「本店のほか、X支店およびY支店を開設している。支店相互間の取引は支店分散計算制度によっている。資料1~資料3にもとづき、本支店合併損益計算書(売上総利益まで)を求めなさい」
この問題と解答用紙は動画の説明文にリンクを貼っていますので、そちらからダウンロードしてください。
まず、売上高と当期仕入高は、決算整理前試算表をそのまま写せばいいので、簡単です。
問題は、期首商品棚卸高と期末商品棚卸高です。
ポイントは、未達と内部利益の2つで、この処理さえわかっておけば、支店間取引があってもそれほど難しくはありません。
とはいっても、全くやらないで本番に臨むのは怖いので、ここで練習しておきます。
ちなみに、この問題の元となった平成26年の第2回公認会計士試験の問題では、問題文を読むのに1分半、未達の処理に1分半、内部利益に1分半、集計0.5分で、合計4.5分か最大5分以内で正解してほしいです。
それでは資料を見てきます。
まずは資料1ですが、未達整理前の残高試算表の一部があります。
これらの照合勘定を見て、未達関係を確認してください。
ポイントは未達です。
未達というのは、本店とX支店、本店とY支店、X支店とY支店の3つしかありません。
この3つに未達があるかどうかをチェックします。
それから、資料2は商品棚卸高で、内部利益の算定の話です。
ちなみに、外部売上なので損益計算書の売上もすぐに出ます。
未達や決算整理がないと考えると、本店の外部売上は2,500、X支店の外部売上が1,500、Y支店の外部売上が1,000なので、売上高は5,000となります。
外部仕入は、本店とX支店が仕入れて、Y支店は仕入れていません。
商品は、甲商品と乙商品の2種類があって、甲商品は本店に仕入れて、内部利益を25パーセント付加してX支店とY支店にも売っています。乙商品はX支店が仕入れて、内部利益を20パーセント付加して本店とY支店に売っています。
こういったところも、はじめて見たらパニックになりますので、慣れてください。
X支店における仕入2,000というのは甲商品で、Y支店における1,500は乙商品ということがわかります。
2,000と1,500で合計3,500が当期仕入高になります。
問題は期首と期末です。
期首商品棚卸高は、本店が400と240、Xが250と500、Yが200と120です。
資料3はその他の条件として、「商品売買に関するデータは以上がすべてである」、「前期末において未達取引はなかった」、「資料2の期末商品棚卸高には未達取引が含まれていない」、「期首および期末商品棚卸高に内部利益が含まれており、利益率は毎期一定である」とあります。
では、まず、未達状況を整理します。
ポイントの1つ目は、未達取引の正確な把握をすることです。
本店におけるX支店に対する相互勘定が600あります。
そしてX支店における本店勘定は貸方500です。
ということは、600-500で100だけ未達があると思ってください。
つまり、貸方「本店100」、借方「本店仕入100」となります。
そうすると、期末の商品は、X支店においては、期末の甲商品200と乙商品400に加えて、100の未達があるということです。
つぎに、本店におけるY支店勘定と、Y支店における本店勘定を見てみると、どちらも1,200で未達がないので「OK」と書いておきます。
こんどは、X支店とY支店ですが、X支店のY支店勘定の借方1,000、Y支店のX支店勘定は貸方880なので、違っています。
ということで、X支店におけるY支店への債券1,000、Y支店におけるX支店への債務は880、差し引き120違います。
120未達があるので、貸方「X支店120」、借方「X支店仕入120」になります。
今回は未達取引が内部売上だけなので、お互いの本支店勘定と売上・仕入勘定の差額は一致します。
だいたいこのパターンだと思います。
もし、2つの支店が出たら、〓【00:13:43】誰も解けなくなってしまうので、多分このレベルだと思います。
最低限、この動画で提供している類題だけ見ておけば問題ないと思います。
それ以上やったら誰もできないと思うので、さすがに2つの支店で〓【00:13:53】思います。
本店はX支店との間で100の未達があって、X支店とY支店の間には120のXからYへの売上の未達がありました。
そうすると、期首商品と期末商品の内部利益を計算するときに、Yの期末商品棚卸高は甲商品300、乙商品180がありますが、Xからの未達の乙商品が120あったので、さらにこれもプラスします。
このように考えていただければいいです。
ということで、これで未達はわかりました。
本店とXの間には内部利益25パーセント込みで100の未達があって、XからYに対して内部利益20パーセント込みで120の未達がありました。
本店、X、Yと三角形を書いてみると、未達はこの2つだけということが簡単にわかります。
このように三角形で整理すると簡単にわかります。
そこまでわかれば、あとは内部利益だけです。
ポイント2は、期首商品と期末商品の内部利益については、期末の未達を忘れないことです。
つまり、X支店における期末の甲商品100は25パーセントの内部利益が付加されています。
そして、Y支店がX支店から買った乙商品は20パーセントの内部利益が付加されています。
まず、単純に商品を足してみましょう。
本店の期首商品棚卸高は400+240で640になります。
X支店の期首商品棚卸高は250+500で750になります。
750と640を足すと1,390です。
Y支店の期首商品棚卸高は200+120で320です。
すべてを合計すると1,710になります。
これが内部利益込みの数字です。
内部利益をみてきますと、本店はYからのものがあります。
これは240×1.2分の0.2と計算して、40と出ます。
同じように、X支店は250÷1.25×0.25で50になります。
Y支店は2つあります。
甲商品が200÷1.25×0.25で40です。
乙商品120も同じように計算して、20になります。
これらの内部利益を全て足すと、40+50+40+20=150の内部利益になります。
そうすると、1,710-150=1,560が損益計算書の期首商品棚卸高となります。
ここまでは解答してほしいです。
難しいですけれども、未達取引は何とかなると思います。
期首商品は通常未達が無いはずなので、内部利益を1つずつ分析していけばできると思います。
期末も同じようにやります。
本店の甲商品360+乙商品360、Xの甲商品200+乙商品400+未達の100、Yの甲商品300+乙商品180+未達の120すべてを足すと、合計2,020になります。
これが内部利益込みの数字です。
そして、期首と同じように、計算によって内部利益を出します。
本店の乙商品360÷1.2×0.2で60。
X支店における甲商品は200と未達の100で合計300÷1.25×0.25なので60。
Y支店は、甲商品が300÷1.25×0.25で60。
乙商品は180と未達の120があるので、300÷1.2×0.2で50。
これらの内部利益をすべて足すと、230になります。
したがって、損益計算書における期末商品棚卸高は2,020-230=1,790となります。
少し大変ですが、これができたらすごいです。
ここまで出る可能性は低いですが、そろそろ2つの支店が出てもおかしくないと思っています。
なぜかというと、昨年の試験で、連結の問題で子会社が2つあるパターンが出たからです。
落ち着いてやればできるはずなのですが、突然出されると焦ってしまいます。
なので、余裕のある方は事前に準備しておいたほうがいいかもしれません。
期首商品が1,560+当期商品3,500-期末商品1,790=売上原価3,270になります。
売上高5,000-売上原価3,270で、売上総利益は1,730となります。
2つの支店がある場合は三角形を使うとわかりやすいです。
未達だけではなく、内部利益でも、期首の三角形、期末の三角形を作れば、漏れがなくなります。
よかったら、三角形を使って内部利益や未達取引を整理する方法を参考にしてください。
今回は少し難しい問題でしたが、万が一支店が複数出た場合でも1回確認しておけば気持ちが楽になると思います。
これがしっかりできるかどうかが合否を分けますので、この機会に確認してみてください。
ただ、出る可能性は低いので、時間の余裕が無い方は、オーソドックスな本支店会計の問題と、在外支店があるパターンだけでもやっておいてください。
時間に余裕がある方は、支店が2つあるパターンも確認しておいてください。
興味のある方は取り組んでみてください。
以上で今回のお話を終わりにしたいと思います。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。
PREV
できるものを増やすより、できないものを減らす発想が大事!
|
NEXT
新しいことに手を出さない
|
前回までも「出題されたら危ない」と言い続けています。