簿記、仕入勘定の決算整理前残高と「P/L当期仕入高」の関係

がんばろう日商簿記1級合格、今回は「仕入勘定の決算整理前残高と損益計算書の当期仕入高との関係」についてお話をしたいと思います。

これは、上級レベルの簿記を学習するにあたって、多くの受験生の方が最初につまずく所です。

ここをしっかり理解することで、商品売買取引について光が見えてくるようになります。
上級レベルの第一歩です。
日商簿記検定3級・2級での先入観を打ち砕く良い機会です。
2級までの学習をある程度経験していることを前提に説明いたします。
上から「売上高」「売上原価」「売上総利益」…と、段階的に利益を表示する方法を報告様式といいます。

これに対して、日商簿記検定3級で学習したのは、T字勘定の形をとって、貸方の収益から借方の費用引いた差額を当期純利益とする方法を勘定様式といいます。
このように、3級は勘定様式、2級は報告様式を勉強したのですが、報告式の中でみなさなんが苦手にしやすいのは、売上原価の内訳なのです。

1番が期首商品棚卸高、2番が当期商品仕入高、3番が期末商品棚卸高で、差し引きをして売上原価を出して、売上高から売上原価を引いて売上総利益(粗利益)を出します。
ここまでは2級の復習ですが、上級レベルになってくると、仕入勘定の扱いに戸惑うことが多くなります。

決算整理前残高試算表の仕入勘定をxとすると、3級で教わるのは、このxは当期に買掛金などで仕入れた分で、期首の商品棚卸高は決算整理前の繰越商品勘定なので、期首に当期仕入を足します。

そして、期末に決算整理をして、最後に決算整理後の仕入勘定は売上原価を表すというように、決算整理前の仕入勘定は当期仕入高、決算整理後の仕入勘定は売上原価を表すというような、漠然としたイメージを植え付けられながらここまで来たと思います。

そうすると、1級の学習を始めると、特に過去問をやるとガツンとやられることになります。
日商簿記1級レベルになってくると、決算整理前の仕入勘定は仕入高とは限りません。
なぜかというと、2級でもやっていますが、仕訳でしかやっていない特殊商品販売が出てくるからです。

特殊商品販売を思い出してみると、たとえば手許商品区分法というやり方がありますが、これをやった場合、もちろん積送品は手許商品を区分します。
それから、試送品です。
試用販売で、対照勘定法の場合にはこの問題は出てこないのですが、手許商品区分法というものもやります。
2級では少ししかやっていないのですが、このときは「貸方 仕入」「借方 試用品」などとなって仕入勘定が減ります。

このことから、前T/B(決算整理前残高試算表)の仕入勘定の残高というのは、当期仕入高のみを表しているわけではないということを理解してください。
それでは、仕入勘定が貸方にくるものを具体的に見ていきます。
まず、典型的なものとしては「積送高」です。
受託者に発送した積送高はもちろんマイナスになります。
「貸方 仕入」「借方 積送品」という仕訳になります。

それから、手許商品区分法を採用した場合の「試送高」があります。
仕訳は「借方 試送品(あるいは試用品)」「貸方 仕入」となります。
それから、「仕入戻し」があります。
「貸方 仕入」「借方 買掛金」のようなパターンです。
もう1つ、「仕入値引・割戻」もあります。

これは仕入代金を減らすことで、「貸方 仕入」「借方 買掛金」という仕訳になります。
なので、決算整理前残高試算表の仕入xというのは、当期仕入から積送高、試送高、戻し高、値引・割戻を引いたものなので、x+積送高+試送高+戻し高+値引・割戻というように、足し戻さなければいけません。

でも、それだけではまだ足りないものがあります。
みなさん、2級で「都度法」というのを勉強したと思います。
特殊商品販売、特に試用品と積送品で手許商品区分法をやっている場合、売り上げる都度、「貸方 積送品」「借方 仕入」というように、仕入勘定に振り替えていたと思います。

2級の場合は大抵、都度法なのです。

たとえば、積送品を売ったときの積送原価、試送品の原価をその都度振り替えることになります。
期末一括法の場合は戻りません。
期末一括法は1級でやっていますが、毎日の売上の都度、原価を調べることが面倒だから積送高、試送高が売れたときには、「借方 売掛金」「貸方 積送売上」というようにして、仕入勘定への振替はしません。

なので、期末一括法のほうが実務的なのです。
今回は都度法なので仕入勘定が増えます。
これが決算整理前残高試算表をわかりにくくしています。
積送原価、試送原価以外には、未着品原価というものもあります。

たとえば、未着品を転売した場合は、「借方 未着品売上」「貸方 売掛金」として、同時に「貸方 未着品」「借方 仕入」と仕訳をします。
それと、未着品の到着高もあります。
この場合、「貸方 未着品」「借方 仕入」となります。

このように、期中で仕入勘定に加算される要因というのは、今説明しただけでも、積送品の売上原価、試送品の売上原価、未着品の売上原価(都度法)、未着品の到着高があります。
その一方で、仕入勘定から減らすものとして、積送高、試送高、仕入戻し、値引・割戻しがあります。

これを考えると、当期仕入高に積送原価と試送原価と未着原価と未着品到着高を足して、さらに積送高と試送高と仕入戻しと値引・割戻しを引いてxができます。
これをわかっていれば、これを待ち構えて仕訳すればいいのです。
決算整理前残高試算表の仕入xがわかれば、これに値引・割戻し、仕入戻し、試送高、積送高があればそれぞれを足して、その合計からさらに未着品到着高と未着原価と(都度法で仕入原価に振り替わっている場合は)試送原価と積送原価を引いて当期仕入高を求めることができます。

未着品の到着は処理漏れが無い限りは仕入勘定に入っているはずなので、問題文をよく見てください。
みなさんのお手持ちの総合問題で、この計算を何度かやってみてください。
日商検定1級以上の問題で、仕入勘定に関する分析はだいたいこのパターンです。
これを頭に入れた状態で問題を解くと楽になります。
決算整理前残高試算表の仕入勘定について少し話をすれば、その人の簿記の実力もわかるのです。
この知識をゲットして、使えるようになって、1級以上の商品売買を得意にしてください。

私はいつもあなたの日商簿記検定1級合格を応援しています。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

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