直前期の方もいますし、11月の試験や来年など、これから簿記2級をめざす方もいらっしゃると思いますが、工業簿記の標準原価計算が苦手な方が多いんです。
ちなみに、140回では、最近の出題の傾向からして、そろそろ標準原価計算が出ると思っています。
標準原価計算と直接原価計算というものがありますが、このあたりはそれまでやってきた勉強と少し違う流れなので、苦手にする人が意外に多いです。
標準原価計算のポイントは、仕掛品勘定の書き方、原価差異分析のうち直接材料費と直接労務費の原価差異、製造間接費の原価差異の3つぐらいがわかっていれば、バリエーションは簿記2級に関してはないので、簿記2級のポイントをしっかりと押さえてください。
そうすると、将来、簿記1級の工業簿記・原価計算に通じてきます。
私の個人的な意見として、標準原価計算は第140回のヤマのひとつです。
標準原価をなぜやるかというと、原価管理なのです。
たとえば、同じ100個の物を作ったとして、4月に100個作ろうが5月に100個作ろうが常識で考えたら同じ原価であるはずです。
しかし、考えてみてください。
材料を海外から輸入したときの為替相場が変わった場合は、それだけで材料の単価が変わってしまうのでブレます。
あるいは石油を買うときに、50ドルから60ドルに上がった場合など、マーケット要因で材料の仕入れ単価というのは経営者が管理できないことが多いのです。
あとは、従業員の賃金が、たとえば4月は残業が多かったから割増賃金が増えたとか、いろいろな季節的な要因で、原価がブレることがあります。
原価のブレがどれぐらいあったかを把握することも管理になります。したがって、商業簿記よりも経営者の立場で管理する発想が大事になります。
標準原価計算というものを採用すると、同じ100個を作るときに、1個あたりの標準を決めて、4月に作ろうが5月に作ろうが、棚卸資産上の経営管理上のあるべき売上原価を出します。
4月に作ろうが5月に作ろうが、100個作ったことに対する売上原価は100万円であるべきだという標準の原価を決めて、実際に計算した場合は4月は101万円、5月は106万円と月によるズレをいったん「原価差異」というふうにピックアップして、管理して、また売上原価に戻します。
原価管理の観点から、次に改善するときの参考資料にしようということで原価差異を抽出します。
標準というのは目標のことで、原価管理の観点から目標を設定します。
これが標準原価計算の主旨です。
やることは、目標(標準)値を決める、実績を出す、目標と実績の差異を分析するという3つで、特に3つ目の分析が大事になります。
差が出たら分解します。
たとえば、今月100個作って、標準原価は100万円だけれども実績は106万円で、6万円多かったのはなぜかという2つに分けます。
1つは価格要因で、為替レートの変動や仕入れ単価など、マーケットの要因によるので一般には管理不能と言われています。
一方、数量要因は一般に管理可能と言われています。
消費量の増加は現場の能率の善し悪しもあるので、これを抜き出して経営会議の対象にします。
これは日商検定1級の理論対策にもなるぐらいの話です。
計算例でみていきます。
原価標準とは製品1単位あたりの標準原価です。
その結果、当月の実績として出したものを標準原価といいます。
原価標準は製品の単位です、標準原価は金額です。
今回は1単位イコール1個とします。
製品1個を作るのに1キログラム100円の材料を10キロ使います。
これが標準です。
標準単価100円、標準消費量10キロ。
1個作るのに100円×10キロで1,000円になります。
当月の生産量は投入量で比較します。
だから月初はたまたま0です。
完成が40個、月末が10個なので、計算は40+10で合計50個のアウトプットです。
すでに月初に着手しているものが5個とするならば、50個-5個で45個となります。
これは当月の着手・投入量です。
これは始点投入と言って簡単なケースで、簿記2級はこれが多いと思います。
最初に投入するので1個あたりの完成品だろうが1個あたりの月末仕掛品だろうが材料費は同じだということです。
当期の材料始点投入の実際消費額は51,510です。
端数があるのでズレそうですよね、ここがポイントです。
すべて掛仕入をした材料を投入したとします。
これを踏まえて柴山式の総勘定元帳を見ていきます。
まずは勘定記入を確認します。
左上は資産のグループに属するT字勘定を集めます。
右上は負債で、買掛金です。
右の真ん中は純資産で資本金などですが、今回は省略します。
右下は収益で売上などですが、これも省略します。
左下は交通費、交際費、売上原価などいろいろあります。
今回は原価差異だけ費用勘定です。
ここがポイントで、原価差異は費用勘定なのです。
差異が出たら売上原価に加算または減算します。
いったん抜き出します。
まずは51,510で仕入れると仕訳は「借方 材料51,510」「借方 買掛金51,510」になります。
どこに属するかという勘定科目の性質まで意識するから理解が進みやすいのです。
買掛金はあとは放っておきます。
標準原価計算の良いところは、数量データさえあれば完成品が出るところです。
40個がわかっていて、標準単価が1,000円なので1,000円×40個で借方は製品40,000円、
貸方は仕掛品40,000になります。
月末10個も始点投入なので完成品と同じ1個あたりの標準原価、ということは1,000円×10個で仕掛品は10,000が次月繰越になります。
ということは50,000の標準原価です。
借方は今回はパーシャルプランを使います。
仕掛品勘定の借方に投入を実際に書くことをパーシャルプランといいます。
ここを標準原価で書くことをシングルプランとなって材料費で原価差異がでますが、今回は実際に振り替えます。
「貸方材料 51,510」、「借方 仕掛品51,510」ということは、借方の仕掛品当月投入が51,510で貸方のアウトプットが50,000なので、1,510ずれます。
これが原価差異の部分です。
「貸方 仕掛品1,510」「借方 原価差異1,510」に振り替えます。
原価差異は費用勘定です。
原価差異が出たということを毎月分析して、最後は損益計算書の売上原価に加算されます。
ちなみに原価差異は借方に書かれるので、これを借方差異とも言います。
本来50,000で済むはずのところを51,510と1,510余計にかかっているので、これを不利差異といいます。
反対に有利ならば貸方に原価差異がくるので貸方差異、または有利差異といいます。
今回は追加でかかっているので借方差異、または不利差異といいます。
それでは次に、この1,510という差異はどういう原因で出たのかということを理解するために、原価差異分析があります。
まず、1,510を値上がり要因と消費数量の能率要因に分けます。
実際消費量の51,510円は実際単価が102円でした。
標準消費量は50,000円でした。
ボックス算では数字の大小に関係なく実際単価は必ず縦軸の上のほうに書きます。
標準は内側100円。
2円値上がりしています。
横軸も数字の大小に関係なく右端が実際で内側が標準です。
内側から外側に引いてマイナス5キロになります。
実際消費量505キロ×実際単価102円=51,510で、これが標準の50,000に向かって差が出てきます。
この差の分析をします。
まず何をやるかというと、価格差異は102円と100円で2円の差です。
これを実際数量使ってしまったわけです。
505キロについて1キロあたり2円ずつ損していますから505キロ×2円=1,010円です。
数量差異は、標準単価で評価します。
5キロの使い過ぎを標準単価で評価します。
100×-5=-500円です。
これで実際単価51,510から価格差異1,010を引いてさらに数量差異500を引いて標準原価50,000になります。
逆に言うと、50,000の標準原価に数量差異500を足して価格差異1,010を足すと実際価格51,510になります。
このデータはあとでスキャンしてYouTubeやアメブロにもアップしますのでぜひご覧ください。
価格差異は不利差異または借方差異1,010、数量差異は不利差異または借方差異500です。
これで1,510の総差異が出るということがわかっていただければいいと思います。
これが直接材料費差異・直接労務費差異の出し方で、試験に出る可能性が高いです。
この他に製造間接費差異もありますが、予定配賦の発想がわかればそれに能率差異が加わるだけです。
ぜひマスターして本試験に臨んでください。
私はいつもあなたの簿記2級合格を心から応援しています。
ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。
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