連結超入門6「子会社の利益と非支配株主持分」

いよいよ11月の検定試験から簿記2級にも連結会計が出題されます。
簿記1級の学習者も初期の状態ではイメージが持ちにくく苦手意識を持たれている方もいらっしゃると思いますので、「連結超入門」ということで、今さら聞けない連結会計についてのお話をしたいと思います。

今後の学習に役立ててください。
まず前回までの流れをおさらいしたいと思います。

第5回では50%超の出資をして子会社にしているけれども、他にも第三者の株主がその子会社に出資しているケースについて取り上げました。

前回の例でいくと、A社は子会社X社を設立しましたが、X社の資本金1,000のうち600を出資して、残りの400は第三者であるB社が出資しました。

その結果、A社のB/Sは借方が現金1,100、土地800、子会社株式600で、貸方が資本金1,500、利益剰余金1,000になりました。

X社のB/Sは現金1,000と資本金1,000ですが、資本金1,000のうち600はA社から出資を受けた分で、400はB社から出資を受けた分です。

よって、X社の資本金1,000のうち600はA社の子会社株式と重複しています。
そして、400は非支配株主持分です。
ここまでで分からない方は「連結超入門」の第5回目を復習してください。

まず、A社+X社の連結初年度の期首のB/Sを見てみましょう。
借方は現金2,100(A社1,100+X社1,000)、土地は800(A社)、子会社株式600で合計3,500です。

貸方は資本金2,500(A社1,500+X社1,000)、利益剰余金1,000(A社)で、合計3,500です。

X社の資本金のうち600は子会社株式と重複していますので相殺して、残り400は非支配株主持分になります。

そして、利益剰余金1,000はまだAの分だけです。
投資と資本の相殺消去をしますが、仕訳は(借方)資本金1,000 (貸方)子会社株式600 非支配株主持分400となります。

これにより、期首の連結B/Sを見てみると、借方合計は3,500から2,900に減っていますが、減少した600というのは子会社株式600を相殺消去した分です。

資産合計も3,500から2,900と減っていますが、資本金が2,500から1,000に減って、400だけ非支配株主持分が増えたので、3,500-1,000+400=2,900となります。

非支配株主持分400というのはX社の資本金1,000のうち400を置き換えたものです。
この部分は大事なので10回書いて覚えましょうと前回にお話しました。

以上が非支配株主持分のお話です。
それを踏まえて、期末のA社とX社それぞれのB/Sを見てみましょう。

A社のB/Sは期首と同じで、借方は現金1,100、土地800、子会社株式600で合計2,500です。

貸方は資本金1,500、利益剰余金1,000で合計2,500となり、期首と変化はありません。
一方、X社は期首と期末で変わっています。

期首では現金が1,000で資本金1,000でしたが、期末には現金2,000になり、その分利益剰余金1,000が増えました。

この状態の連結イメージはどうなるかというと、現金は1,000で、利益1,000のうち600はA社の連結上の利益600ですが、1,000のうち400は非支配株主持分になります。
これが本来のイメージですので、書いて覚えてください。

連結上ではこのようにしたいのですが、個別決算でこのようなことはしません。
X社の個別財務諸表は、今までの3級の勉強と同じように利益の増加なのです。

ここは現金1,000で利益1,000ですが、そのうち400はAの利益に取り込んではいけないので、非支配株主持分400とします。

ですので、仕訳としては(借方)現金1,000 (貸方)利益600 非支配株主持分400となります。
この仕訳を10回書いて覚えてください。

本当は利益600と非支配株主持分400にしたいのですが、これは連結ではなくX社の個別B/Sなのでできないのです。

ということで、1,000の利益が多いので、(借方)利益400 (貸方)非支配株主持分400とするのです。

では、A社の連結1年度目・期末のX社との合算B/Sを見てみましょう。
現金はA社が1,100でX社は1,000から2,000に増えたので、合計3,100です。

そして、利益剰余金はA社が1,000でX社が1,000ですが、X社の1,000のうち400は非支配株主持分に置き換えるので、連結上の利益は1,600になります。

資本金はA社とX社の合計で2,500になりますが、このうち1,500はA社のもので、Xは1,000です。

X社の1,000のうち600は子会社株式と相殺をして、400は非支配株主持分に置き換えます。

ということは、X社の資本金1,000のうちの400(非支配株主持分)と利益1,000のうちの400(非支配株主持分)を合わせて、非支配株主持分は800になります。

ここがポイントです。
ここは10回見てもいいです。

非支配株主持分で悩んでいる1級学習者は実はここが分かっていないのです。
資本金の部分の40%と、その後儲けた利益のうちの40%を足すのが非支配株主持分です。

それを踏まえて、連結仕訳が2つあります。
A+XのB/Sにある子会社株式600と、資本金2,500(A社1,500+X社1,000)のうちX社の1,000の一部である600が重複しています。

それでは投資と資本の相殺消去を行います。
X社の資本金1,000のうち40%が非支配株主持分なので、1,000×0.4=400を非支配株主持分に置き換えて、残りの600は子会社株式と相殺します。

仕訳は(借方)資本金1,000 (貸方)子会社株式600 非支配株主持分400となります。
そして利益についても仕訳を行います。
仕訳は(借方)利益剰余金400 (貸方)非支配株主持分400です。

利益2,000のうち1,000はX社が稼いだ利益で、Xの利益のうち60%をA社の連結B/Sに取り込むので、1,000×0.6=600が連結B/Sに取り込むX社の利益ということになります。

従って、連結B/Sに表示させるべき利益剰余金の額はA社の利益1,000+X社の利益600=1,600となります。

X社の利益1,000のうち600は利益となりましたが、残りの400は非支配株主持分に置き換える必要があります。

従って、当初の資本金1,000のうち40%の400が非支配株主持分となって(Ⅰ)、さらに連結後の儲けの利益剰余金1,000のうち40%にあたる400を非支配株主持分に置き換えます(Ⅱ)。

従って、(Ⅰ)と(Ⅱ)を足して800が非支配株主持分となります。
これがポイントです。

この連結B/Sをよく確認してください。
そして、(Ⅰ)と(Ⅱ)の仕訳をそれぞれ10回書いてみてください。

そうすると、非支配株主持分への振替がザックリ分かるようになります。
まず資本金と相殺をして、次に子会社の利益剰余金を振り替えます。
これが理解できると連結はとても楽になります。

余談ですが、子会社が配当をする場合は非支配株主持分の400から配当を行うので、この400のうち100を配当したら(借方)非支配株主持分100 (貸方)現金100としなければいけないのです。

これは簿記1級で学習する受取配当金の相殺という話に繋がります。
以上で今回のお話を終わりにします。

今回は結構レベルの高いお話をしましたが、前回の「連結超入門⑤」とあわせてご覧になって頂くとイメージしやすいかもしれません。
ぜひ頑張ってください。

私はいつもあなたの連結会計の学習と日商簿記検定2級・1級の合格を心から応援しております。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

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