既に持っている子会社に対する株式を買い増しして、たとえば70パーセント支配している子会社を10パーセントプラスして80パーセントにする、あるいは、逆に、70パーセントのうち10パーセントの持分を売って60パーセントにすることを一部売却といいます。
この2つは、1級としては応用論点ですが、よくある取引です。
3つ目は時価発行増資といって、応用取引ですが、子会社が増資をすることによって持分が変わることがありますが、これが持分の追加取得や一部売却の応用編です。
この3つについて、これから3回にわたってシリーズでお話ししたいと思っています。
今回は第1のシリーズで、追加取得ということです。
改正連結では、追加取得に関して根本的な考え方が変わっています。
簡単な計算例をつくったので、見ていきましょう。
A社がB社株の70パーセントを取得しました。
ここは以前の連結と変わりません。
子会社の株式の原価150,000円、これは投資額、「貸方 現金150,000」「借方 子会社株式150,000」と、1回現金を払っていますが、これは支払い額という意味です。
B社の資本金が100,000、利益剰余金が100,000なので、このときの純資産額、あるいは株主資本が200,000。
ということは200,000の70パーセントなので140,000の持分を取得したのだから、本来の子会社株式の原価は140,000でもいいのに150,000払っているということは、10,000円余分に払ったということになります。
これがいわゆるプレミアムで、のれんといいます。
この10,000円ののれんは10年で償却することになるので、10,000÷10年で毎年1,000ずつ償却して、最後は0にします。
国際会計基準と違って日本の会計基準は、のれんを償却します。
これはよく日経新聞に出る話題です。
いずれ、のれんは償却しなくなるのだろうという予測はありますが、今のところは償却しています。
国際会計のほうに合わせていますからね。
のれんの償却は、今は20年以内ですが10年としています。
連結1年度目の資料のⅳにはB社の純利益は20,000です。
資料ⅴでは、年度末にB社の株式を10パーセント取得追加、原価は25,000円で合計80パーセントになります。
ちなみに、ⅴの段階でB社の資本はいくらになるでしょうか。
最初は資本金100,000、利益剰余金100,000で200,000です。
200,000にⅳの20,000をプラスして、220,000になりました。
220,000の10パーセントはいくらですか。
22,000の持分を買って、払ったお金は22,000ではなく25,000で、3,000余計に払っています。
この3,000の取扱が今回大きく変わったのです。
まず、基本的な、資本と投資の相殺・消去を行います。
資本金と利益剰余金をいったん合算しますが、これを消します。
借方は資本金100,000と利益剰余金100,000で200,000減ります。
貸方は70パーセントで140,000のところ、150,000を払っているので、150,000を消します。
非支配株主持分は200,000×0.3で60,000です。
子会社の資本100,000+100,000で200,000、200,000の30パーセントが60,000です。
60,000と150,000で貸方は210,000ですが、借方は200,000なので差が出ます。
借方のれん10,000円、これは無形固定資産です。
これを今後10年で償却することになります。
この10,000円の差額についてはいいですよね、子会社の持分200,000×70パーセントの140,000と投資額150,000の差額です。
次にⅲ、のれんは10年で償却についてです。
のれんの10,000円÷10年で、「借方 のれん償却額1,000」これは費用です。
「貸方 のれん1,000」となります。
B社の当期純利益はⅳから20,000、いったん合算しています。
したがって20,000で足していますが、20,000は足しすぎです、30パーセントは非支配株主に振り分けないといけません。
新しい会計基準では、借方は「非支配株主に帰属する当期純利益」という長い表示になります。
以前は少数株主損益などといっていましたが、仕訳上はそのようにしておいて、表示上は……この正式名称は長いですね。
最近の会計の財務諸表は長くてセンスを感じません。
短くしたほうが良いと思います。
ネーミングはコピーライターの人に頼んで、ひと目でわかるようにしたほうが良いと思います。
これは単語ではなく文章です。
最近は文章を勘定科目にしているので少し困ります。
さて、「借方 非支配株主に帰属する当期純利益6,000」これは20,000の30パーセントです。
当期純利益を振り替えます。
貸方は非支配株主持分、これは従来、少数株主持分といっていたものです。理由は、必ずしも少数ではないからです。
今は50パーセントを超えていなくても、45パーセントぐらいの持分でも親会社になることがあるので、そうすると親会社以外の株主が55パーセントで、それで少数株主というのも変な話で、非少数株主という表し方はおかしいので、非支配株主持分という名前に変わっています。
非支配株主持分は、この1年後までで60,000+6,000で66,000です。
66,000というのは連結1年度末の子会社の資本に30パーセントをかけた数字と合います。
たとえば、子会社の資本は、元々資本金100,000、利益剰余金100,000万で200,000万です。
それに当期純利益の20,000を足して220,000になりますよね。
220,000の資本に対して30パーセントをかけると66,000になるので、最新の状態の子会社の資本、今回は簡単にしているので評価差額は見ていません。
評価差額があれば、本来の評価差額も入れて資本を計算します。
B社の最新の純資産に持分比率をかければ、基本的には一部成果連結、未実現損益のようなものがあればまた変わってきますが、最新のB社の資本に持分比率をかけて振り分けられます。
ということは、最新のB社の資本は、資本金100,000、利益剰余金100,000、当期純利益20,000の計220,000で、220,000×0.3で66,000になるように調整されていますよね。
この66,000ある状態から、10パーセントの持分を非支配株主から引いてプラスします。
ということは、66,000÷0.3×0.1としても22,000が出ますよね。
66,000から22,000を引けば、非支配株主持分は44,000になるということは22,000の20パーセントに戻ります。
そのように調整すると考えても良いですし、あるいは、単純に今あるB社の資本220,000の10パーセントを非支配株主持分から振り替えたと考えて、220,000×0.1で22,000としても良いです。
この計算のほうが割と使いやすいと思います。
変動時の子会社の資本、これが220,000×10パーセントで22,000、非支配株主持分からもらったということです。
そして、子会社株式と相殺します。
このとき、22,000であればいいですが、25,000払っています。
以前の会計基準であるならば、のれんにしていました。
のれんにするということは、10年などの償却で費用になるので、損益処理費というものです。
これを損益にすることが、今までの会計基準の考え方で、親会社説というのをとっていたのでいいのです。
親会社が連結決算の主体ですから。
親会社の株主にとって払込資本のものだけが払込資本でした。
とすると、子会社の払込資本というのは親会社の貸借対照表個別から関係ないですよね。
なので、子会社の払込資本は変動しても、実はあまり関係なかったのです。
だからここは、のれんで償却して良かったのです。
これが持分の一部売却ならば、子会社株式の売却、損益の修正があるのです。
損益だったのです。
のれんに計上するのも損益取引という言い方ができますからね。
逆に負ののれんが出ることもありますよね。
22,000の借方、非支配株主持分に対して子会社株式20,000しか払っていなければ2,000が貸方になります。
この場合、昔は負ののれんと言っていました。
負ののれんは特別利益で、そのまま損益です。
ということで、ここをのれんにしてしまうと、損益取引に通じてしまします。
それは何かというと、子会社の払込資本、子会社の資本の変動は親会社にとっては損益でいいという話なのです。
つまり、以前は資本取引の範囲を親会社の払込資本の変動だけに限定していましたが、今回は国際会計に調和させるイメージで、子会社の払込資本の変動も連結を主体に取り組みましょうということで、連結の対象を増やすイメージなので、これは経済的単一体説といいます。
子会社を含めた連結グループ企業全体の株主のために連結財務諸表を作るのです。
ということは、子会社の払込資本の変動も資本取引と考えます。
これが今回大きな流れなのです。今の説明は公認会計士レベルです。
公認会計士を受ける方は今の説明が会計学の論文でできなければまずいです。
トピックなので出る可能性はあります。
支配を継続しているときの持分変動というのは、昔は損益取引になります。
つまり、のれんにしてのれん償却をするとか、一部売却の場合は子会社株主売却損益の修正をしていましたが、今は資本剰余金です。
これは会計学で出る可能性があります。
持分追加取得における持分の変動額と投資額の差額を損益取引と言ったら不正解です。
これは資本取引です。
みなさんは仕訳を資本剰余金と覚えて、資本取引というのだなと覚えてください。
これが今の新しい解釈で、連結に関する考え方の修正になっているのです。
やや、経済的単一体説に近づいていますが、基本は日本の基準はまだ親会社説というやり方です。
1級の勉強でも、親会社説という言葉と経済的単一体説という言葉は聞くことがあります。
会計学でいうなら、ここで穴埋めをする可能性は低いと思いますが、○×で出るかなという気がします。
仕訳で覚えておけば何とかなります。
ここはかつて、のれんでしたが資本剰余金です。
柴山式でも改正レジュメなどで対応していますが、知っておいてください。
商業簿記で出題されるかはわかりませんが、会計学で少し出る可能性はあり得ます。
あるいは、会計士の方は狙われてもおかしくない論点です。
資本取引とみなす、経済的単一体説の精神を少し取り入れていると思ってください。
難しいところはともかく、まずは簡単な事例で、最後の仕訳の結論「借方 非支配株主持分22,000 資本剰余金3,000」「貸方 子会社株式25,000」をしっかり覚えてください。
私はあなたの1級合格をいつも応援しています。
ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。
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